地方大学の活性化
2007年10月16日
これらが引き起こす問題点として、以下の3点があげられる。(1)地方大学の破綻が現実のものとなる、(2)若者が都市圏にますます移動し、地方が衰退する、(3)無試験で入学した学生を受け入れた大学の質が保てなくなる。つまり、(1)大学経営の問題、(2)地方活性化の問題、(3)学生の意欲の問題、である。
いくら「地方の活性化」を声高に叫んでも、将来の担い手である若年人口がどんどん流出するようでは、地域社会の未来は乏しい。また、東京を中心に都市圏も、これ以上の人口集中は望むところではないだろう。地方大学の存在は、人口を地方にとどめるバッファー、もしくはプールの役割を果たしているとも言えるであろう。地方の大学の魅力を高めることが重要となってくる。
米国の事例を見てみると、州立大学とコミュニティーカレッジの存在が、地域への人材供給に大きな役割を果たしていることがわかる。コミュニティーカレッジとは、全米50州に1200校ほどあり、文字通り「地域大学」のような存在である。特徴としては、昼夜開講しており、「学問」というより「職業訓練」に近い内容も講座も多い。また、コミュニティーカレッジで優秀な成績を収めると、3年次から州立大学への編入が可能であり、実際、自宅から通学できるコミュニティーカレッジで2年間しっかり勉強し、そこから州立大学へと進むコースは、米国ではとても一般的であり、経済的な面や、学生の学習意欲の面からもメリットがある。
日本でも、県立大学や市立大学が各地に存在するが、地元の大学との単位互換や編入制度などのコンソーシアムは、あまり活発に行われていない。制度的な問題や、経営上の問題など、幾つかのハードルはあろうが、地元が1つにまとまって、「地域として魅力ある大学ネットワーク」を提供する余地はまだ十分にあるのではないだろうか。前述の3つの問題点を解決するには、もうあまり時間は残されていない。魅力的な地域には、魅力的な教育機関があるものである。
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