ユーロ圏の株を買ったのは?
2007年07月24日
03年3月を底とする欧州株の上昇局面は5年目に入っている。この上昇局面で欧州株を買っているのは誰か?この質問に答える適当なデータがこれまでなかったのだが、今年6月からECB(欧州中央銀行)がユーロ圏の資金循環表の公表を始めた。その中から「株式・出資金(=上場株+未上場株+投資信託)」の主体別保有データをピックアップすると、06年末の保有者構成は大きい順から事業会社(27%)、家計(18%)、外国人(18%)、投資信託(17%)、保険・年金基金(9%)、銀行(7%)、政府(4%)となっている。データが入手可能な99年3月末から06年末までの8年の変化に目を向けると、構成比が大きく拡大したのは外国人(13%→18%)と投資信託(13%→17%)で、保険・年金基金(8%→9%)もやや拡大した。一方、家計(25%→18%)の構成比が大きく低下。また、事業会社(29%→27%)と政府(5%→4%)も若干低下した。なお、銀行(7%→7%)は横ばい。旧来からの投資主体である家計や事業会社に代わって、外国人と投資信託の存在感が増している。
売買動向に注目すると、この傾向がいっそうはっきりする。投資信託は株価下落が2年目を迎えた02年こそ577億ユーロの売り越しとなったが、03年から06年は一貫して買い越しており、この4年の累計で1兆4868億ユーロ買い越した。同期間に外国人は1兆1914億ユーロの買い越し。この両者で買い越し総額4兆3109億ユーロの62%を占めている。外国人投資家はほとんどが機関投資家と考えられるため、保険・年金基金(8%)を加えると、機関投資家による購入は7割を占める。残りの3割の内訳は事業会社が17%、銀行が8%、家計が4%、政府は1%未満である。
ところで、欧州株上昇の背景を知るには、本当は上場株に限定した主体別投資動向が知りたいところである。しかし、今回ECBが公表した資金循環表では、「株式・出資金」の内訳の一つである「上場株」の主体別投資データのうち、外国人のデータが入手できない。ただ、それ以外の「上場株」の主体別投資動向を見ると、投資信託による買い越しが目立つという点では「株式・出資金」の投資動向と同じである。03年から06年までの4年間で投資信託はユーロ圏の上場株を8271億ユーロ買い越した。一方、やや異なるのは、政府と家計が売り越しとなっている点で、この4年間で政府は609億ユーロ、家計は253億ユーロの売り越しとなっている。政府については、財政赤字削減のために国有企業を民営化し、株式を売却する動きとなっていることが背景にあると考えられる。一方、家計は株式を直接保有するよりも、投資信託や保険などを通じて間接的に保有する傾向を強めている。残る事業会社、銀行、保険・年金基金は03年から06年にかけてそれぞれ1702億ユーロ、1481億ユーロ、590億ユーロずつ上場株を買い越した。しかし、これでは株式市場に対して大きなインパクトとなったとは考えにくい。投資信託に加え、外国人投資家が欧州株式市場で重要な買い手となり、03年以降の欧州株上昇を牽引してきたと考えられる。
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