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「三角合併」の使い勝手

2007年03月20日

金融調査部 主任研究員 横山 淳

2007年5月1日から、存続会社の株式ではなく、その親会社の株式を消滅会社の株主に交付する「三角合併」が可能となる。そうした中、3月13日に「三角合併」などの手続の詳細を定める会社法施行規則(案)が法務省から示された。この中で、外国株を対価とする場合であっても、通常の合併等と同様に株主総会の特別決議(原則、出席株主の議決権の2/3以上)とすることが明らかにされた。一部の経済団体による「外国株を対価とする場合(外国会社が国内企業を「三角合併」などで買収する場合)には承認の決議要件を引き上げよ」という要求は受け入れられないこととなりそうだ。

確かに、これらの団体が、被買収リスクにナーバスになる気持ちは理解できないではない。しかし、これらの団体が主張するように、外国株を対価とする「三角合併」は、原則、株主総会の「特殊決議」(議決権を行使できる株主の(人数の)半数以上、かつ、総議決権の2/3以上)が必要とした場合、余りにもハードルが高すぎる。これでは、両社が真に合意している場合でさえ、外国会社による国内上場会社に対する「三角合併」は、ほぼ不可能になってしまう。その意味では、法務省の判断は妥当なものであるだろう。

それでは、両社が真に合意しているのであれば、外国会社が国内企業を「三角合併」で買収するハードルは低くなったと考えてよいのであろうか?税制という極めて大きな問題もあるが、ここでは手続面に絞って考えて見よう。

キャッシュを使わないでよいという「三角合併」利点を最大限活かすために、事前にTOBなどによる株式の買付けは実施しないと仮定しよう。この場合、既存の株主だけで「特別決議」を可決する必要がある訳だが、必要な賛成票を獲得することは必ずしも容易ではないだろう。例えば、個人株主の中には「国内企業だから投資している」という人もいる。そういった株主の立場からすれば、対価が外国株で為替リスクもあるというのでは、よほどの好条件でなければ賛成できないだろう。また、機関投資家についても、必ずしも賛成票を期待できるとは限らない。スポンサーから「日本株運用」を指示されているファンドマネージャーの立場からすれば、日本株として投資している銘柄が、突然、外国株に変わるというのは「受け入れ難い」ことである。場合によって「事前に売り切ってしまうほかない」と考えているファンドマネージャーも多いようだ。

仮に、そうした困難を乗り越えて、株主総会で承認をもらったとしても、次にどうやって国内株主に対価となる外国株を引き渡すか、という問題が生じる。紙の株券を大量に印刷してもらって、船や飛行機で国内に持ち込むなどというのは、余りにも非現実的である。結局、海外の決済・預託機関(日本の「ほふり」に相当)やカストディアンに存在する外国株についての権利を、何とかして国内の何千、何万という株主に割り当てるよりほかはないだろう。2009年に株券が電子化された上で、「ほふり」がDTCCやユーロクリアといった外国の決済・預託機関と提携を結ぶことができれば解決の糸口は見えてくるかもしれない。しかし、それまでは大変な困難を伴うことは容易に想像がつく。

そのように考えれば「三角合併」の使い勝手については、まだ議論の余地がありそうだ。

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