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TOPIX浮動株化と子会社上場の意義

2005年09月26日

新谷 理

いよいよ10月よりTOPIXの浮動株化が行われる。再三報道されているように、今年の10月末と来年2月末、来年6月末の3回に分けて浮動株化が実施される見通しである。TOPIX浮動株化の際には総額18兆円にも達するパッシブファンド(ETFを含む指数連動型のオープン型投信や、裁定取引など)のリバランスによる売買が短期的に行われることから、一部の銘柄では株価の急激な騰落が起こる一大イベントとなる可能性が指摘されている。しかしそれだけでなく、長期的に見た場合においてもTOPIXの浮動株化は日本株式市場において、無視できない影響を及ぼすと推測される。その一つに子会社上場の問題があげられよう。

子会社上場の問題は日米の株式市場においての代表的な差異である。アメリカでは殆ど見受けられないが、日本ではメーカーを中心に積極的に子会社を上場している。一般的に子会社ファイナンスは親会社の増資よりも有利な資金調達方法として考えられているが、そのからくりに上場株式数ベースで各銘柄のウェイトを評価する現行TOPIXの存在が関与している。

前出のTOPIX連動型パッシブファンドは、現在では原則として各銘柄の上場株式数の約5%ずつを一律に買い入れている計算となる。しかしこの一律5%の買い入れは浮動株比率の高低によってその重みが全く違う。浮動株比率が低い銘柄はこうした買い入れは需給に無理が生じるためオーバーバリューしやすい。またアクティブファンドにおいてもTOPIXを上回ることを意識するため、需給の歪みが大きい値上がりしやすい上場子会社を積極的に買い入れるインセンティブが働く。従って結果として子会社の株価は実態より高い水準になりがちであり、企業グループにとって子会社上場は親会社の増資よりも有利な資金調達方法であったのである。しかし需給の歪みの元となるTOPIXが浮動株化することで、こうした恩恵の多くは消失すると考えられる。

恩恵が消失すると今度は子会社上場における資本論理の矛盾が表面化する。具体的には以下の点が問題となろう。

(1)

子会社上場は企業グループのコーポレートガバナンス、連結納税、連結配当にねじれを生じさせるため、長期的な企業形態のありようとして好ましくない。
(2)成長性に富む子会社を上場させることで企業価値を外部流出させる行為は、親会社の株主に対しての背任行為となり、悪くすれば訴訟の対象となる可能性がある。
(3)子会社上場という形で一部にしろ資本を親会社から切り離すことは、それだけ親会社の企業価値を小さくし、グループのM&A等による買収からの防御力を弱める。

アメリカでは大体以上のような問題点から子会社上場が忌避されている。TOPIX浮動株化によって日本の株式市場はより効率化され、また会社法の改正なども同じタイミングで行われることから、日本市場においてもより資本の原理が透徹化されアメリカ型市場に近づくと考えられよう。今まで恩恵が大きかったことから見逃されてきた子会社上場を問題視する傾向が強まると推測され、各グループは今まで以上にグループとしてのあり方、資本政策を熟考する必要がある。TOPIX浮動株化が新たなグループ再編の導火線となる可能性も考えられるのである。

 

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