拡大する中国の高級消費財市場に注目

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2004年09月10日

  • 篠原 春彦
「世界の工場」としてだけでなく「世界の市場」としても注目を浴びる中国で、高級消費財市場が急速に拡大している。2003年の乗用車の国内販売台数は、前年比75.3%増の197万台に達したほか、家電製品でもPDPテレビの国内販売は2001年の2,000台から2003年には32,000台と16倍の規模に達している。因みに韓国の同年の乗用車の国内販売台数は120万台程度、PDPテレビの国内需要が35,000台であったことを勘案すると、一人当りGDPが1,000ドル程度に過ぎない中国でも、高級消費財市場は相当な規模に達していると言える。

この高級消費財市場でイニシアチブを取ろうとするグローバル企業の中国進出が相次いでおり、特に上海では街を歩けばまるで世界ブランドのオリンピックが開かれている感がある。ここ数年で、現時点での実需要が一気に一巡してしまった感があり、自動車、携帯電話などは2004年に入って国内販売は足踏みをしているが、下記のファクターを根拠に潜在需要が大きいのは確かであり、中国の高級消費財市場への注目度はさらに高まりそうである。

一つ目のファクターは中国の中高所得世帯層(家計所得60,000人民元以上:約85万円)の拡大である。中国の統計庁によれば、1995年には2.3%に過ぎなかった中高所得世帯層は2002年には10.1%まで増加している。また、上海と北京には現在、世帯所得10万元以上の富裕層がそれぞれ200万人ずついるという調査結果もある。

二つ目のファクターは「小皇帝」世代が新しい消費階層に浮上しつつある点である。「小皇帝」世代とは1979年から開始された一人っ子政策の影響で子供は大切にされ、甘やかされてまるで皇帝のようだと揶揄された世代である。この世代は消費についてはブランドと品質を最優先し、外国ブランドに対する選好度も高い。「小皇帝」と一緒によく使われる言葉に「四二一」がある。「四」は父方の祖父母とは母方の祖父母を合わせて四人、「二」は両親、「一」は子供を指す。つまり、大人6人が一人の子供に高価なものを買い与える過保護の構図があり、現在20代前半のこの世代が新しい消費階層となりそうだ。

三つ目のファクターは熾烈な競争や関税の引き下げなどによる販売価格の下落である。中国は輸入関税が高いだけでなく消費税が17%と高いほか、奢侈税もあるため、高級消費財は日本で購入するよりも非常に高い値段で販売されていた。しかし、最近では中国自動車市場で最大のシェアをもつフォルクスワーゲンは今年4月に12%の値下げを行うなど価格の低下傾向が顕著になってきており、高級消費財も購入しやすくなってきている。

以上、大きく3つの要因から急拡大が見込まれる高級消費財市場あるが、既に全世界のほとんどのグローバル企業が参戦し、あらゆる商品分野で競争が繰り広げられているというのが実情である。加えて、国内企業も力をつけてきており、パソコンや携帯電話では国内メーカーのシェアが外資を上回ったほか、自動車などもシェアを拡大させている。よほどのブランド力、技術力を持つか隙間市場でない限り、新規参入はもはや難しい。市場の潜在力が大きいのは確かであるが、国内外の企業による競争がより一層、厳しくなっており、「勝ち組」になるための生き残りをかけた熾烈な競争が続きそうである。

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