拡大する中国の高級消費財市場に注目
2004年09月10日
この高級消費財市場でイニシアチブを取ろうとするグローバル企業の中国進出が相次いでおり、特に上海では街を歩けばまるで世界ブランドのオリンピックが開かれている感がある。ここ数年で、現時点での実需要が一気に一巡してしまった感があり、自動車、携帯電話などは2004年に入って国内販売は足踏みをしているが、下記のファクターを根拠に潜在需要が大きいのは確かであり、中国の高級消費財市場への注目度はさらに高まりそうである。
一つ目のファクターは中国の中高所得世帯層(家計所得60,000人民元以上:約85万円)の拡大である。中国の統計庁によれば、1995年には2.3%に過ぎなかった中高所得世帯層は2002年には10.1%まで増加している。また、上海と北京には現在、世帯所得10万元以上の富裕層がそれぞれ200万人ずついるという調査結果もある。
二つ目のファクターは「小皇帝」世代が新しい消費階層に浮上しつつある点である。「小皇帝」世代とは1979年から開始された一人っ子政策の影響で子供は大切にされ、甘やかされてまるで皇帝のようだと揶揄された世代である。この世代は消費についてはブランドと品質を最優先し、外国ブランドに対する選好度も高い。「小皇帝」と一緒によく使われる言葉に「四二一」がある。「四」は父方の祖父母とは母方の祖父母を合わせて四人、「二」は両親、「一」は子供を指す。つまり、大人6人が一人の子供に高価なものを買い与える過保護の構図があり、現在20代前半のこの世代が新しい消費階層となりそうだ。
三つ目のファクターは熾烈な競争や関税の引き下げなどによる販売価格の下落である。中国は輸入関税が高いだけでなく消費税が17%と高いほか、奢侈税もあるため、高級消費財は日本で購入するよりも非常に高い値段で販売されていた。しかし、最近では中国自動車市場で最大のシェアをもつフォルクスワーゲンは今年4月に12%の値下げを行うなど価格の低下傾向が顕著になってきており、高級消費財も購入しやすくなってきている。
以上、大きく3つの要因から急拡大が見込まれる高級消費財市場あるが、既に全世界のほとんどのグローバル企業が参戦し、あらゆる商品分野で競争が繰り広げられているというのが実情である。加えて、国内企業も力をつけてきており、パソコンや携帯電話では国内メーカーのシェアが外資を上回ったほか、自動車などもシェアを拡大させている。よほどのブランド力、技術力を持つか隙間市場でない限り、新規参入はもはや難しい。市場の潜在力が大きいのは確かであるが、国内外の企業による競争がより一層、厳しくなっており、「勝ち組」になるための生き残りをかけた熾烈な競争が続きそうである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月10日
アメリカ経済グラフポケット(2022年8月号)
2022年8月8日発表分までの主要経済指標
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月08日
非農業部門雇用者数は前月差+52.8万人
2022年7月米雇用統計:雇用環境は堅調、労働需給はタイトなまま
-
2022年08月05日
2022年6月消費統計
感染状況の落ち着きから、緩やかな回復基調を維持
-
2022年08月10日
多様化時代の金融サービス業のあり方
よく読まれているコラム
-
2022年07月21日
2022年度の最低賃金引き上げはどうなるか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2022年01月12日
2022年米国中間選挙でバイデン民主党は勝利できるか?
-
2021年12月01日
もし仮に日本で金利が上がり始めたら、国債の利払い費はどうなる?
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?