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利便性とコンプライアンスの狭間に揺れるインスタント・メッセンジャーの活用

2003年11月13日

伊藤 慶昭

米国証券業界において、インスタント・メッセンジャー(IM)が利用されはじめてから数年が経過する。IMはリアルタイムで複数の相手とコミュニケーションがとれる上、基本的に無料サービスであることから、従業員の個人利用を皮切りに業務の効率化および即応性が期待され普及してきた。大手リサーチ会社のIDCは、業務上のIM利用者数が2006年には世界で2億人を突破するといった予測を出しており、米国証券業界においては通信手段として認知されつつある。また瞬時の投資判断が必要なトレーディング部門では不可欠なツールとなっている。

しかしその一方で、セキュリティや業務以外での利用による生産性の悪化など、懸念材料も指摘されている。加えて2002年にEメールから端を発した投資銀行部門とアナリスト部門による一連の癒着問題や、大手ブローカー5社によるEメールの保存義務違反など、IMがEメールと同等の機能を持つゆえに、これらの問題が再発するといった懸念材料としても捉えられている。特に米国証券取引委員会(SEC)の解釈では、IMに対してもEメールと同様に取引記録の保管義務を明言していることから、IMの導入は金融機関にとってデータ保管コストの負担増に繋がりかねない。

このような諸問題を抱えつつも米国金融業界の流れとして、各社では社員にIM導入を条件付きながら認可する方向に動いており、議論の主題はIMの運用管理体制のあり方に移行している。最近の形態として、1)無償IMの利用を許可し、IM管理サーバーを設置することで利用状況を監視する、2)無償IMを全面的に禁止し、その代わりにクローズな企業用IM(EIM)を導入する、またこの他に、3)監視機能をクライアント端末へ導入し、無償IMを活用するといった試みも行われている。しかしながら、どの方法にも一長一短があって最善策が見出せていないのが実情である。日本の証券業界においても、IMの普及が予測されることからEメールのみならず、電子媒体によるコミュニケーション手段に関する包括的なコンプライアンス体制の確立が求められるところである。

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