地域の雇用状況

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2003年11月11日

  • 星野 菜穂子

日本経済が回復軌道に乗る中で、雇用問題、なかでも地方圏の雇用問題への関心が高まっている。10月31日に、労働力調査の地域別の最新結果(03年7~9月期)が公表されたが、雇用改善は緩やかながらも南関東で先行していることが示された。

同調査によると、2003年 7~9月期の地域別失業率(原数値)は、北海道5.6%、東北5.6%、南関東4.9%、北関東・甲信4.2%、東海4.0%、北陸3.9%、近畿6.2%、中国4.2%、四国5.3%、九州6.1%であった。全国の5.1%に対して、北海道、東北、近畿、四国、九州が全国水準を上回っている。前年差をみると、北海道(△0.3)、南関東(△0.5)、東海(△0.1)、近畿(△0.9)、中国(△0.3)の5地域が失業率の低下がみられ、北関東・甲信(0.0)、北陸(0.0)の2地域が横ばいであった。残る東北(+0.4)、四国(+0.1)、九州(+0.2)の3地域は前年を上回った。

南関東と、東海、近畿を除く他地域を地方圏としてみると、南関東の改善が先行していることがより明確となる。2003年に入ってから、南関東の失業率は前年に比べ低下を続けている。就業者も4~6月期、7~9月期と2期連続前年比増加した。一方、地方圏は、就業者は02年に比べ減少幅は縮小しているものの引き続き減少しており、失業率の改善も南関東ほどには進んでいない。就業者の動きの違いを産業別にみると、南関東は、建設業、製造業の減少はあるものの、その他のサービス業、医療・福祉など第三次産業の就業増がそれらを補っている。特に、情報通信業は、今年に入って3四半期連続で高い増加寄与を示しており、これは南関東のみにみられる特徴的な動きといえる。他方、地方圏は、製造業、建設業のマイナス寄与度は大きいが、南関東のように他産業によって十分補われておらず、医療・福祉、公務の増加寄与が高い以外は、いずれもわずかな増加にとどまるかマイナスとなっている。

製造業、建設業の就業減が続く中、サービス業が雇用の受け皿として期待されるものの、南関東と地方圏ではサービス雇用の質も大きく異なっている。地方圏においては、製造業、建設業の就業機会の減少が、他に替わる産業がない中で男性の常用雇用の雇用機会喪失につながっている可能性が高い。地方圏における雇用確保については、臨時雇用増の流れが強まる中、都市圏以上に課題となることも考えられる。

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