バーガーノミクス

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2003年11月10日

  • 田中 一嘉

昨年の初め、円ドルレートは1ドル130円程度であったが、その後、円高(ドル安)傾向が続き、現在は1ドル110円にまで増価している。そこで、今回はイギリスのエコノミスト誌が作成しているビッグマック指数とセントルイス連銀が最近発表したレポート(Burgernomics: A Big Mac Guide to Purchasing Power Parity, Review, 11月/12月号)を参考に為替レートについて考えてみたい。

ビッグマック指数は、1986年以来、毎年4月に発表されているが、その際には、多くの人々の注目を集めており、その信奉者も少なからずいるようだ。この人気の背景のひとつには、わかり易さがあるようだ。この指数の名前の由来は、ハンバーガーショップであるマクドナルドの商品、ビッグマックである。ビッグマックの利点は、商品はもちろんだが、製造工程までもが世界120カ国で統一されている点である。(ただし、幾つかの例外がある。例えば、ヒンズー教では牛は神聖なものとされているために、ヒンズー教徒の多いインドでは、牛肉の代わり鶏肉が使われている。)従って、一物一価だとすると、各国のビッグマックの値段を比べることで、ビッグマックを基準にした購買力平価、つまり為替レートを求めることができる。

ところで、どのくらい働けば、ビッグマックを1つ買うことができるのだろうか?セントルイス連銀のレポートでは、ビッグマック指数の調査対象となっている国々の時間給からそれを計算している。その結果は、調査対象の32カ国中で最も時間の少ないのは日本の10分となっている。日本では、10分の労働でビッグマックがひとつ買うことができるのだ。次が米国の11分で、以下、香港、オーストラリア14分、カナダ14分、イギリス15分と続いている。反対に、ビッグマックひとつを買うために必要な労働時間が最も多いのはフィリピンの112分である。次がインドネシアの74分で以下、コロンビア67分、ベネゼイラ66分、メキシコ65分と続く。

さて、興味深いのは、ビッグマック指数からみた円の為替レートであるが、今年4月の調査では、1ドル96円68銭となっている。現在の円ドルレートは1ドル110円程度であるから、円はドルに対して12%過少評価されていることになる。また、中国の人民元に対するビッグマック指数は、1人民元26円46銭となっている。これに対して実際の為替レートは1人民元13円程度だから、円は人民元に対して倍近く過大評価されていることになる。

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