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減損会計、いよいよ実施段階へ

2003年11月06日

吉井 一洋

平成15年10月31日に、企業会計基準委員会(ASBJ)から、固定資産の減損会計の適用指針が公表された。これにより、減損会計の基準と実務指針が出揃ったことになり、いよいよその適用に向けて各企業が準備に取りかかる段階となった。

減損会計は、固定資産を用いている事業の収益性が低下し、投資額の回収が見込まれなくなった場合に、その帳簿価額を減額し損失を計上する会計処理であり、有形・無形を含んだ固定資産全般を対象としている。不動産の時価評価や低価法とは異なる臨時的な損失処理であり、不動産や建設業界に限らず、全業種が対象となる。不採算事業を整理もせずに抱えたままで、対策も講じていない企業は、業種にかかわらず、減損が生じる可能性がある。

その一方で、実際に減損が計上されるケースは、今回の適用指針によりかなり限定された。減損会計の適用に当たっては、まず「減損の兆候」の有無を判定するが、「減損の兆候」の一つである「市場価格の著しい下落」の要件が、当初案の帳簿価額の「3割程度以上の下落」から「5割程度以上の下落」に緩和された。減損は資産グループ単位で適用されるため、その資産グループの単位が大きくなればなるほど、ある資産の損失は別の資産の利益にカバーされて減損は生じにくくなる。適用指針では、セグメント情報における事業区分を超えなければ、相当程度大きな単位でのグルーピングを認めている。例えば、電力業、保険業、鉄道業などは、その事業全体を一つの資産グループとすることも認めている。これらは、予定通り平成17年度から強制適用することを最優先し、産業界の要望に相当配慮したことによるものである。

減損会計は企業の見積もりによる部分が大きく、外部からの分析は困難である。減損会計に関する注記が要求されるのも、実際に減損が計上される場合に限られているため、例えば「減損の兆候」はあったが、グルーピングの単位が大きく、ぎりぎり減損の計上を免れたようなケースでも、外部から把握することはできない。したがって、ある日突然、多額の損失が計上されるリスクは依然残されている。ただし、少なくとも、企業に従来よりは早い段階での不採算事業の整理や建て直しを促し、損失の一層の拡大を防止するという効果は期待できるものと思われる。

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