関西発中国ビジネスへのメッセージ

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2003年11月04日

  • 肖 敏捷

先日、日本経済新聞社と関西経済人・エコノミスト会議は大阪で討論会を開催した。三洋電機の井植敏会長による基調講演「アジアの共生」の後、ダイキン工業の川村群太郎専務、丸紅の西田健一特別顧問と筆者で「中国ビジネスの将来」をテーマにパネル討論を行った。その詳細は日本経済新聞(11月1日付)の特集記事ですでに取り上げられているが、会議に参加した感想などを含め振り返ってみたい。

雨にもかかわらず参加者は600人を超え、日本での「中国ブーム」の根強さを改めて実感した。新型肺炎の打撃を受けた第2四半期の実質経済成長率は、同時期としては1992年以来最も低い水準に落ち込んだが、足元では力強い成長基調を取り戻していること、そして、積極的に中国ビジネスを展開している三洋電機、ダイキン工業、丸紅の3社の成功体験を聞きたいという期待感が大勢の参加者を集めたのだろう。パネル討論の際に筆者は、豊富な労働力、高い貯蓄率などの強みに鑑み、中国の経済成長は長期的に持続可能と言及した上、中国ビジネスはブームとしてではなく、長期的な視点で考えるべきだと強調した。また、WTO加盟を契機に各分野で規制緩和が加速しているため、日本での投資と同じ感覚で中国への進出を考え、中国市場を活用する日本企業が今後さらに増えてくる可能性を指摘した。

ただし、自動車、携帯電話などをはじめ様々な分野で、中国企業だけでなく欧米企業も次々と参入し、中国市場をめぐるグローバル競争が激化しているため、最高レベルの技術や人材などを備えて臨むべき、と提案した。一方、中国への進出がもはや当たり前になっている現状下、失敗する企業の増加も自然の成り行きであろう。コピー商品や売掛金の回収など中国独特のビジネスリスクを念頭に置き、進出イコール成功という甘い幻想は最初から抱くべきではなかろう。この意味では、合弁契約に投資額の3分の2の累損が出たら自動的に解散という項目を加えるダイキン工業の戦略は現実的といえる。

一方、通貨の切り上げ問題を含め、米国との貿易摩擦問題にどう対応するか、サービス分野を含めどのような開放策を打ち出すのか、などの課題に70年代から取り組んできた日本企業は、中国の今後の変化を予測するに当たって欧米企業より有利な立場にあるはずだ。変化を恐れず迅速に対応することが、中国だけでなく、すべてのビジネスに共通する基本ではないかと、他の参加者の議論を聞きながら改めて認識した。

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