そろそろ李克強指数にお別れを

2015年10月1日

9月22日から25日に中国北京市を訪問する機会を得た。

9月3日の軍事パレードを前に国家の威信をかけた大気浄化作戦が展開され、状況は(短期的にせよ)大きく改善されたと聞いていたが、機内アナウンスでは、北京市の天候は「もや」といわれた。北京の空気は白かった。何のことはない、大気汚染は「常態」に戻っていたのである。

これまで中国企業が大気汚染対策をはじめとする環境保護投資に前向きではなかったのは、極論すればこうした投資をコストとみなし、それを抑えることが是とされたためである。現地取材では、「2016年から始まる第13次5ヵ年計画で、環境保護投資に対して『投資減税』を導入し、企業にメリットを感じさせることを提案したい」との指摘があったが、全くの同感である。

話は変わるが、海外で重用される「李克強指数」は、中国では(少なくとも公の場では)ほとんど使われない。今回の取材でも耳にしなかった。

「李克強指数」とは、李克強首相が2007年の遼寧省党委員会書記時代に、遼寧省の景気実態を表す統計として電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行貸出を重要視していたとされることに由来する。

海外では、中国政府が発表する経済成長率は高すぎ、実態はもっと悪いはずであるとの分析があり、その根拠として「李克強指数」が使われることが多い。

しかし、電力消費量と鉄道貨物輸送量は李克強首相が重工業依存度の高い遼寧省のトップであったからこそ、重要視された可能性が高い。電力消費量の多い重工業の生産が増加すれば電力消費量は増えるであろうし(逆も然り)、鉄道輸送は重くてかさばる鉄鋼・鉄鉱石などを運ぶのに適している。言い換えれば、李克強首相が別の地方、例えば北京市や上海市のトップであったら、李克強指数の構成指標は別のものとなっていたであろう。

よって「李克強指数」は、「李克強遼寧省指数」と呼ぶべきものである。2015年1月~6月の遼寧省の実質成長率は2.6%にとどまり、地方別で最低となった(全国は7.0%)。遼寧省の経済実態を見るのに適した「李克強指数」が、景気失速といえる状況に落ち込むのに違和感はない。しかし、遼寧省が中国全体を代表するわけではない。少なくとも「李克強指数」が中国全体の景気実態をより適切に表しているというのは、明らかな誤りであろう。

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