サマリー
◆日本経済は2024年春にかけて停滞したようだ。3月分が未公表の基礎統計があるため暫定的な数字ではあるが、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率▲2%前後を見込む。一部工場の稼働停止による自動車の大幅減産の影響が大きく、サービス輸出の反動減も成長率を押し下げたとみられる。4-6月期は、自動車の挽回生産や家計の所得環境の改善などもあって2%台後半のプラス成長を見込んでいる。
◆4-6月期以降の景気の下振れリスクとしては、中東情勢の緊迫化や中国の不動産不況などの海外要因に加え、国内の物価上昇率の高まりが挙げられる。今後は賃上げによる人件費の増加だけでなく、足元で進む円安・原油高や5月で終了する政府の電気ガス補助などの影響で、人件費以外の事業コストも増加するだろう。企業がこうしたコスト増を販売価格に積極的に転嫁すれば、物価上昇が想定以上に加速したり、実質賃金の上昇時期が後れたりする可能性がある。
◆日本の2023年度の貿易収支は3年連続で赤字となったが、その一因は輸出の伸び悩みにある。そこで、顕示貿易統合比較優位指数(RTA)から日本の貿易財の国際競争力を業種別に評価すると、2000年代以降に素材業種や輸送機械で改善が見られたが、電気機械ではPCやスマホなどの資本財や、家電などの消費財が「比較劣位」に転じるなど競争力の低下が顕著だ。他方でサービス収支に目を向けると、いわゆる「デジタル赤字」が拡大している。貿易・サービス収支は今後も赤字基調が継続する可能性が高く、収支構造の強靱化や国際競争力の維持・強化に向けた取り組みの重要性は増している。
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