サマリー
◆足元までの経済指標を概観すると、自律的な成長を示す民間最終需要(個人消費、設備投資、住宅投資の和)は堅調さを維持し、インフレ率は高止まりの傾向を示している。インフレの高止まり懸念が募る中で、パウエルFRB議長は利下げ開始の先送りを示唆し、市場の利下げ期待も低下した。
◆インフレ率の高止まりは、旺盛な投資家センチメントを背景とした金融環境の緩和によって、需要が押し上げられたことが要因として考えられる。FRB関係者の研究によれば、投資家センチメントを沈静化し、インフレ圧力を低下させるうえで、引き締めサプライズを演出することが効果的とされる。
◆今後金融環境がタイト化しない場合には、FOMCは①利下げ開始を2025年に先送り、②①に加えて2025年の利下げ幅も縮小、③更なる追加利上げの示唆を通じて、引き締めサプライズを引き起こす可能性がある。①から③へと進むにつれ現時点におけるサプライズが大きくなるわけだが、リスク要因としては、過度なサプライズによる金融環境の急激なタイト化、ひいては景気の大幅な腰折れとなる。
◆引き締めサプライズに伴う景気の急激な下振れリスクに加え、大統領選挙を控えた先行き不透明感による投資家センチメントの悪化や、これまでの金融引き締めの効果発現の可能性があることを踏まえれば、FOMCは様子見を続けつつ、要すれば小出しにサプライズを狙う両にらみのスタンスを取ると見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
米GDP 前期比年率+3.0%とプラスに転じる
2025年4-6月期米GDP:輸入の反動減が押し上げた一方、内需は減速
2025年08月01日
-
FOMC 9月利下げに向けて含みを持たせる
インフレ統計の歪みと雇用統計の弱含みに注目
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日