今の電力量を知りたい パート2

2012年5月22日

2012年5月11日、東京電力は2012年7月1日からの電気料金の値上げを経済産業大臣に申請した。申請内容の中には、顧客の負担軽減につながる仕組みとして「料金メニューの設定・拡充」も示されている(※1)。家庭向けの電気料金は、使用量の増加に伴い料金単価が上昇する「3段階料金制」をとっているが、この段階ごとの値上げ幅を変えているのである。照明や冷蔵庫等生活に不可欠な電気の使用への影響を軽減するため、一番安い第一段階の値上げ幅を一番小さくしている(図表1)。

図表1 東京電力の三段階料金制度
図表1 東京電力の三段階料金制度
(出所)東京電力「特別事業計画の変更の認定について」をもとに大和総研作成


またピーク時間帯と、それ以外の時間帯の価格差をつけたメニュー(ピークシフトプラン)も示された。従来の季節別時間帯別料金メニューは、夏季(7月1日~9月30日)のピーク時間帯(10~17時)の料金が高いかわりに、夜間の料金が安くなっているが、このメニューを選択するためには、エコキュート(※2)や電気温水器等夜間蓄熱式機器を設置していることが条件になっている。ピークシフトプランでは、こうした機器の設置は条件になっておらず、誰でも選択可能である。ピーク時間帯も13~16時と、実際に電力需給が逼迫する可能性の高い時間帯となっている(図表2)。さらにピークシフトプランを選択した方がいいかどうかを判断するために、シミューレションサイトも公開されている(※3)

図表2 値上げ申請時の東京電力の料金メニュー(家庭向け)
図表2 値上げ申請時の東京電力の料金メニュー(家庭向け)
(出所)東京電力「特別事業計画の変更の認定について」、「電気料金の値上げについて」をもとに大和総研作成


なおピークシフトプランにした方が割安になるモデルケースとして、「比較的多くの電気をご利用いただいているお客さま」の例(従量電灯B、契約容量60A、使用量平均540kWh/月)を紹介している(※4)。一方、「標準的な使用量で電気をご利用いただいているお客さま」のモデルケース(従量電灯B、契約容量30A、使用量平均290kWh/月)では、引き続き従量電灯Bでの契約、つまりピークシフトプランに変更しないことを勧めている。後者のモデルケースに近い拙宅のデータを入れてみても、ピークシフトプランは選択しない方がいいという結果が出た。ピークシフトプランは、家庭に比べると電力使用量が多い中小企業に効果的なプランなのかもしれない。

どのメニューを選ぶにせよ今回の値上げは、日中不在の勤め人に比べ、在宅率の高い高齢者には少なからぬ影響が出るだろう(※5)。筆者の親は、すでにリタイアしている。時々、仕事や趣味のサークルのために外出するが、ピーク時間帯に在宅していることも少なくない。行き過ぎた節電による猛暑日の熱中症や持病の悪化が心配である。しかし、どのような家電をどのくらい使わなければいいかがわかれば、エアコンの使用を過度に控える恐れはなくなるだろう。また拙宅では、エアコンを15年振りに買い替え、照明の一部をLEDに替えたため、これらによって、どれくらい節電できるかを知りたい。

「家電使用を適度に制限する」、「新しいエアコンやLEDがどの程度、節電に結びついたのかを知る」ためには、HEMS(Home Energy Management System)のような、「見える化」ツールが必要となる。この4月から、経済産業省がHEMS導入推進事業(※6)を開始しており、補助額は定額で10万円、8社・16製品が対象となっている(※7)

この中で「既設マンションに設置可」「配線工事不要」「個人で設置可」という条件に合う製品は、1社が提供していた。ただし、専用タブレット端末が必要であり、PCや携帯電話・スマートフォン等からは管理できない。希望小売価格は補助金の、ほぼ2倍。機能の違いがあるとは思うが、昨年の当コラム「今の電力量を知りたい 」でご紹介した、英国のHEMSのようなお手頃価格とは言い難い。またLED照明のリモコン等、周辺機器が増加している状況で、新たな端末は増やしたくないこともあり、導入には躊躇している。今夏も「今の電力量を知りたい」という望みはかなえられそうにない。

(※1)東京電力「電気料金の値上げについて
(※2)関西電力の登録商標
(※3)東京電力「ピークシフトプラン加入シミュレーション」
(※4)東京電力「ピークシフトプラン(ピーク抑制型季節別時間帯別電灯)
(※5)大和総研 溝端 幹雄、鈴木 準「高齢社会で増える電力コスト
(※6)一般社団法人 環境共創イニシアチブ「平成23年度『エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(HEMS導入事業)』
(※7)5月16日閲覧時点

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