政府系ファンドの規制原則は機能しているか?

2011年7月19日

政府系ファンドは、いわゆるリーマンショックの前後に大量の投資を欧米で行い、破綻に瀕した金融機関の立て直しに貢献する一方で、その巨額の資金量と海外政府の影ゆえに、何か政治的な意図を持っているのではないかと疑われた。そのような懸念を解消するため、国際通貨基金の主導で中東やアジアをはじめとした各国の政府系ファンドとの協働により、開示や投資行動に関する規制原則が2008年に策定された。原則が合意された地名をとって、サンチャゴ原則と呼ばれている。

このサンチャゴ原則の遵守状況に関して、政府系ファンドの協議団体であるThe International Forum of Sovereign Wealth Funds (IFSWF)が、「IFSWF Members’ Experiences in the Application of the Santiago Principles」 を公表した。これを読むとサンチャゴ原則の各条項を遵守しているとの回答がほとんどで、証券市場のプレーヤーとして、その投資行動の透明性を高めようと情報開示に取り組んでいることを窺わせる。しかし、「サンチャゴ原則の遵守状況について自己監査を行っているか?」との問いに対して、21の政府系ファンドのうち、8つが、行っていないと回答し、うち6つは現在のところその予定もないと答えており、調査自体の信憑性に疑いを持たせるような結果も出されている。サンチャゴ原則を遵守しているという申告自体が怪しくなる。

昨年来、多くの日本企業の大株主となっているある海外信託口座が注目されている。大株主上位に登場する企業だけでも、百数十社に保有を広げ、その総額は少なくとも2.5兆円ほどに達している。この口座がどのような属性の投資家のものであるか、不明なままであるが、中国の政府系ファンドの資金ではないかと見られている。

サンチャゴ原則には個別の投資についてその状況を明らかにすることまでは規定されておらず、信託口座の実質株主を明らかにするような効果はもともと期待できない。投資を受ける企業側にとっても、株主の正体が不明というだけの理由で警戒することもないので、実質株主の判明が常に必要とされるわけではない。

とはいえ、実質株主を知ることは、企業と株主の間のコミュニケーションを進めるための第一歩である。株主名簿や大量保有報告、投資信託の運用報告書などを手がかりにしても正確な株主状況を把握するができないという現在の仕組みは、政府系ファンドの自主的開示枠組みであるサンチャゴ原則も含めて見直すべきところもあるのではないだろうか。

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