経済社会の衰退招く給与所得減少

2011年5月12日

いささか旧聞になるが、国税庁が公表した「民間給与実態統計調査」(2009年分)において、1年を通じて勤務した給与所得者(年間給与所得者)の平均給与が、前年比5.5%減の405万9千円となり、金額ベースでも23万7千円の大幅減となったことが話題になった。しかし、99年から09年の10年間の推移を見ると、平均給与が増加したのは07年(2万3千円増)のみで、それ以外の9年間は減少を示している。99年の水準(461万3千円)と比較すると、09年の平均給与は12%の減少となっている。給与所得者の平均給与の減少は、必ずしも一時的な現象と捉えることはできない。

99年から09年までの10年間に、給与所得者の総数は5,253万人から5,388万人に増加しているのに対し、年間給与所得者数は約7万人の微増にとどまっている(※1)。この間に非正規雇用者数が増加したのは周知の事実であろう。非正規雇用者等を含めた給与所得者全体が2.6%増加しているのに対し、年間に支払われた給与の総額は217兆円から192兆円に11.5%減少している。このことからも非正規雇用者の給与所得は、さらに厳しい水準にあることがうかがえる。給与所得者の雇用が不安定になり所得が減少すれば、家計が支出可能な金額が減少し、費用の掛かる子育てや教育が敬遠される可能性もある。

02年1月から07年10月までの69ヶ月は、戦後最長の景気回復期間と呼ばれた。しかし、この期間を含む09年までの10年間でも、国及び地方の長期債務残高は200兆円以上増加している。既に多額の債務を抱える政府が、今後、債務を大きく増加させる方向で、経済規模を維持する政策を実施することは難しいであろう。一方、これから給与所得を得ていく世代は、これまでに累積された政府債務を負担しなければならないことになる。給与所得が増加しない中で、税や社会保障の負担が増加すれば、少子化をさらに加速させ、将来にわたって社会と経済を衰退させることにもなりかねない。

企業の競争力を高めながら給与所得者の所得増加を図るためには、給与所得者一人ひとりが力量を向上させ、質の高い知識や技術を駆使した製品やサービスを提供していくことが重要になる。しかし、質の高い人材を育成することは、企業や社会の責任でもある。

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