金融所得一体課税と納税者番号制度の実現時期

2009年6月16日

政府税制調査会(以下政府税調)は、平成21年5月12日に第1回スタディ・グループを開催し、納税者番号制度等の討議を行った。

納税者番号制度とは、各納税者に番号をつけて、さまざまな所得を税務当局が一元的に把握できるようにするものであり、政府税調の資料(以下、資料)によれば、「納税者に広く番号を付与し、(イ) 各種の取引に際して、納税者が取引の相手方に番号を告知すること(ロ) 納税申告書及び取引の相手方が税務当局に提出すべき情報申告書に番号を記載することを義務づけることにより、納税者から提出される申告書と、取引の相手方から提出される資料情報を、その番号をキーとして集中的に整理(名寄せ)及びマッチング(突合)する方式」と定義されている。納税者番号制度等は2009年からドイツでも実施されており、先進各国で導入していないのは、イギリス(※1)、フランス、日本のみということである。

納税者番号制度については、「昭和54年度の税制改正に関する答申」において検討が開始され既に30年を経過しているが、かつてないほど議論が盛り上がっている。

これは、平成21年度税制改正で改正税法の附則に納税者番号制度の導入の準備が明記されたこと、現在導入が検討されている給付付き税額控除については、納税者番号制度がインフラとして重要であること、に因るものである。

証券税制との関連でいえば、平成22年度税制改正で手当てされる予定(導入は平成24年?)の日本版ISA(※2)では、年間一人一口座が原則であり、複数口座を設ける者が出てこないようにするためには、口座情報を名寄せする必要がある。その際には何らかの番号があった方が便利である。

また、金融所得一体課税(平成24年から導入予定)を推進するに当たり、納税者の申告事務負担を軽減するためには、複数の特定口座を名寄せし損益通算を行うシステムを作る必要がある。そのためには名寄せのツールとして番号制度が必要となる。

もっとも、納税者番号制度については、依然として納税者側からプライバシーの問題が懸念されている。この点、解決はなかなか難しいが、給付付き税額控除など、納税者にメリットとなる政策とセットにすることにより、国民の抵抗感も少なくしていくことも考えられている。

現在、番号として候補に挙げられているのは、既存の住民票コードや基礎年金番号であるが、基礎年金番号については、公的年金加入者等のみが対象となってしまい全国民への自動的な付番はできない、住民票コードについては、現行法上、税務当局や民間の利用ができないため法改正が必要となる、といった課題がある。

仮に、納税者番号制度の導入に時間がかかるとしても、平成24年からは日本版ISAが開始される予定であり、また、金融所得一体課税についても開始する可能性がある。これらの対応を考えた場合、差し当たって、証券・金融所得に限った番号制度を採用することも検討してよいのではないかと思われる。

(※1)国民保険番号(National Insurance Number)が税務目的に一部利用されている。

(※2)個人投資家向けの小口の継続的長期投資非課税制度。英国のISA(Individual Savings Accounts : 個人貯蓄口座)を模したためこう呼ばれる。

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