サマリー
◆円安の進行と海外経済の回復を背景とした輸出・生産の高まりと生産能力の逼迫から、日本国内の設備投資の拡大やそれに伴う国内雇用・家計所得の改善が期待されている。同様の現象は戦後最長の景気拡大を記録した「いざなみ景気(02年2月から09年3月)」の期間にも確認された。
◆しかし「いざなみ景気」のアナロジーから、同様の成長シナリオを描くことは難しい。日本企業が事業活動の国際化を進展させている結果、外部要因の改善に合わせて国内の設備投資や雇用を増加させる比率は低下している。日本企業の新規設備投資に対する海外直接投資の割合が、現地の産業蓄積等を背景として上昇トレンドを描き続けるとすれば、国内生産・設備投資・雇用の取り分はさらに低下する。
◆資本ストック循環図を用いてアジア地域の設備投資の動向を確認すると、日本とNIEsは投資過小、中国とASEANは投資過剰との示唆が得られる。しかしこの背景に「生産コストの低い国への垂直的分業を志向した直接投資が進んだ結果、産業蓄積が進み、現地生産の比較優位が高まり、水平的分業を志向した直接投資も進展している」という現状があることを鑑みれば、巷間で言われているような「今後日本は投資回復局面、中国は調整局面」との結論を単純に導くことはできない。
◆海外生産シフトに伴う悪影響を軽減する上で、根本的な問題は労働の再分配の円滑化にある。この点に鑑みると、労働集約的部門の外部化が進む中、海外生産の管理や経営企画、研究開発などの本社機能を担う人材の育成と、これらの部門における雇用吸収力の改善が本質的な課題となろう。
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