日本経済中期予測(2014年2月)
牽引役不在の世界経済で試される日本の改革への本気度
2014年02月05日
サマリー
◆この一年間、安倍政権は、大胆な金融緩和や機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略など、いわゆるアベノミクスを推し進めてきた。この結果、期待が先行する形で円安が進み、足元では失業率は4%を下回ってCPI上昇率もプラスに転じている。
◆大和総研では、こうした政策変化を織り込んで日本経済中期予測を一年ぶりに改訂した。今後10年間の日本の経済成長率は平均で実質1.5%、名目2.3%と予想する。
◆今後10年間の世界経済は米国の底堅い成長が見込まれるなか、メインとなるリスク要因は、予測期間中盤に想定される先進国の金融政策の変更であり、新興国経済は大きな影響を受ける可能性がある。
◆今後10年間の為替見通しは、短期的には日米金利差の拡大により円安に向かうものの、長期的にみれば日米インフレ格差が円高方向に作用するだろう。
◆今後10年間の日本経済は、前半の1.7%成長から、政策変更によってもたらされた円安効果が剥落する後半は1.3%成長へ鈍化しよう。CPI上昇率が2%に届かないなか、日銀による金融緩和は基本的に継続されると見込む。後半も成長を維持し、財政赤字等の問題を解消していくには成長戦略の実行が不可欠である。
◆安倍政権の成長戦略の評価はB(良)の下くらいである。成長率を高めるために必要なのは「公正な競争」と「多様な人材の活用」であり、国家戦略特区やTPP・対日直接投資は国内市場の競争圧力を高めることになろう。また、社会保障制度改革は今春から本格化するが、想定する効果が上がるように給付抑制を着実に進めつつ、財政健全化と整合的な姿を示す必要がある。
予測のポイント
1.今後10年の世界経済と日本経済
(1)今後10年間の世界経済
(2)今後10年間の日本経済
(3)今後10年間の為替レートの見通し
(4)本予測のエネルギーの前提
2.アベノミクスの2年目の評価と課題
(1)金融政策の効果と限界
(2)安倍政権の成長戦略はどこへ向かうべきか
(3)今春から本格化する社会保障制度改革
(補論)2020年度までに基礎的財政収支を黒字化させる消費税率は?
3.世界経済の変調と日本経済
(1)設備投資循環から探る世界の景気循環
(2)米国金融政策とグローバルマネーフロー
(補論)デカップリング論の再来とその本質
(3)円安・海外経済回復の中でも輸出が伸びない5つのリスク
4.モデルの概説とシミュレーション
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