企業から見た従業員持株会の意義

従業員への教育は必要だが、付加価値などにプラスの影響との指摘も

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サマリー

◆2023年3月末時点で、東京証券取引所上場企業のうち約8割が従業員持株制度を導入している。他方で、従業員持株会による株式保有比率は0.5%未満の企業が多く、「株主としての持株会」の存在感は薄い。これには様々な理由が考えられるが、特に足元では、NISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇制度の定着を背景に、相対的に持株会の魅力が薄まっている可能性などもある。

◆従業員が自社の株式を保有することには正負両方の効果が考えられるが、日本のデータを用いた分析では、奨励金の引き上げが従業員一人当たりの持株会保有金額などを増加させ、また従業員一人当たり保有金額の増加が付加価値や平均賃金などにプラスの効果をもたらすとの指摘がある。

◆他方、従業員にとっては、従業員持株会への過度な出資により、資産形成に際して会社への依存度が高まる、といったデメリットもある。ファイナンシャル・ウェルネスに関する取り組みが強化される中、企業としては、奨励金の引き上げなどを含めた持株会の活性化について考える意義はある一方、従業員に対してデメリットも踏まえた教育を適切に行う必要がある。

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