2024年10月07日
サマリー
◆2023年3月末時点で、東京証券取引所上場企業のうち約8割が従業員持株制度を導入している。他方で、従業員持株会による株式保有比率は0.5%未満の企業が多く、「株主としての持株会」の存在感は薄い。これには様々な理由が考えられるが、特に足元では、NISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇制度の定着を背景に、相対的に持株会の魅力が薄まっている可能性などもある。
◆従業員が自社の株式を保有することには正負両方の効果が考えられるが、日本のデータを用いた分析では、奨励金の引き上げが従業員一人当たりの持株会保有金額などを増加させ、また従業員一人当たり保有金額の増加が付加価値や平均賃金などにプラスの効果をもたらすとの指摘がある。
◆他方、従業員にとっては、従業員持株会への過度な出資により、資産形成に際して会社への依存度が高まる、といったデメリットもある。ファイナンシャル・ウェルネスに関する取り組みが強化される中、企業としては、奨励金の引き上げなどを含めた持株会の活性化について考える意義はある一方、従業員に対してデメリットも踏まえた教育を適切に行う必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本企業における個人株主の動向
増加する「個人株主」の影響を考える
2024年08月08日
-
近年の株主優待の実施動向と、廃止による株価下押し圧力の推計
公平な利益還元のため廃止する企業が多いが、廃止公表で株価は下落
2023年01月18日
-
優待内容から見る株主優待廃止企業の特徴
優待廃止企業は「非自社商品」を提供していたケースが多い
2023年03月08日
-
長期保有株主向けの株主優待の動向
長期保有株主に向け、追加的な優待を行う例が多い
2024年03月06日
-
株式分割は企業に何をもたらすか
株式分割が株価や株主数、流動性に与える影響を定量的に分析
2023年07月26日
同じカテゴリの最新レポート
-
日銀のETF売却とスチュワードシップ責任
超長期投資家となる日銀のスチュワードシップ責任の果たし方
2025年09月26日
-
日本銀行がETF・J-REITの市場売却を決定
100年以上かけた超長期売却計画には備えが必要
2025年09月22日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
最新のレポート・コラム
-
日本財政の論点 – PB赤字と政府債務対GDP比低下両立の持続性
インフレ状態への移行に伴う一時的な両立であり、その持続性は低い
2025年10月06日
-
世界に広がる政府債務拡大の潮流と経済への影響
大規模経済圏を中心に政府債務対GDP比は閾値の98%超で財政拡張効果は今後一段と低下へ
2025年10月06日
-
議決権行使における取締役兼務数基準の今後
ISSの意見募集結果:「投資家」は積極的だが、会社側には不満
2025年10月03日
-
2025年8月雇用統計
失業率は2.6%に上昇も、均して見れば依然低水準
2025年10月03日
-
米国の株主提案権-奇妙な利用と日本への示唆
2025年10月06日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日