真のグローバル企業とは

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2017年10月19日

  • 河口 真理子

今や日本企業の多くは売上にしても従業員にしてもグローバル化が進んでいるとされる。しかし発想までグローバル企業かというと、必ずしもそうではない。グローバル企業の条件とは何か考えてみたい。

今やサプライチェーンにおける人権侵害(強制労働や児童労働の有無など)は、企業のブランド価値を毀損する重要なグローバル課題となっている。英国では2015年に現代奴隷法が施行された。これはグローバルサプライチェーンにおける児童労働や強制労働などの状況を把握しようとするものであり、英国企業だけでなく英国で一定規模の事業を営む外国企業も対象となる。この法律への対処のため、多くの日本企業は英国から来日したコンサルタントから対処方法を勉強して、戦略や方針を策定しようとしていた。だが人権に対する社会的感度が低い日本より、英国の現地法人でグローバル人権戦略を作ったほうが早いし合理的だろう。
多くの日本企業ではグローバルな方針戦略策定は東京、海外は現地の営業や製造が中心と分担されており、人権の方針策定本部は欧州に置くというような発想を持つケースは稀だ。モノづくり技術は日本が一番かもしれない。しかし今後SDGsの展開により重要度が高まる、人権や労働環境、ダイバーシティ、NGOとのコミュニケーション、コミュニティ開発などの場合は、海外拠点にノウハウがある場合も少なくないだろう。
つまり、グローバル企業の条件その1は、グローバルに営業網や製造拠点を広げているだけでなく、世界規模で人材や知識というリソースの最適化を図れるかどうかである。

もう一つ重要な条件がある。それは日本で話題になっていないが世界では重要とされる課題をいち早く認識し、経営として取り組むことができる企業かどうかである。

例えば再生可能エネルギーは日本では「環境に良いけど高い」が、欧米や中国ではすでに「環境に良くて安い」エネルギーだ。自社やサプライチェーンが使用するエネルギーを再生可能エネルギー100%に転換するイニシアチブ、RE100には、アップルやマイクロソフトなど世界の大手企業100社以上が参加しているが、日本企業はリコー1社にとどまる。周囲にRE100にコミットした企業が沢山いれば、再生可能エネルギーは当たり前になるが(欧米や中国)、日本のようにほとんど皆無なら再生可能エネルギー100%は夢物語であろう。こういう状況を見るにつけ日本は未だに鎖国しているようにみえる。そして残念なことにグローバルと言われる企業の多くも意識は鎖国状態だ。
では意識が開国している企業かどうかをどうやって見極めるか。それは極めて単純で、経営トップが日本語以外のニュースに接しているかどうか、である。毎朝オフィスにはフィナンシャル・タイムズ(FT)、ウォール・ストリート・ジャーナルと日本経済新聞が並んでいる。その一面の記事の違いにいつも圧倒される。海外の新聞の一面に日本の話題が出ることは稀だ。FTの場合16日はソマリアの爆発、13日は米国の山火事、11日はカタルーニャの独立問題、10日トルコリラの暴落。その中で12日は日本が久しぶりにトップ!しかし残念なことに神戸製鋼の偽装スキャンダル。このメッセージは何か?これは日経だけからではわからない自称モノづくり日本への海外からの目線の変化を示していないか?

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