フィンテックを巡る最近の動き

2015年11月30日

ここ最近、フィンテック(※1)という言葉をよく見聞きするようになったと感じる。フィンテックに対する投資も、近年、世界全体で案件・金額ともに増加傾向にあり、特に近年は加速度的に増加しているとされる(※2)。ネット銀行やネット証券など、広義のフィンテックに含まれるものをはじめ、必ずしも全てが目新しいというわけではないが、フィンテックがここに来て注目されるのは、スマートフォンの普及、人工知能の発展、ビッグデータの活用等、目覚ましい技術発展の波が金融分野にも及んできていることの表れと言える。

フィンテックが参入する分野は、送金・決済、預金、融資、投資、資金運用・管理等と多岐にわたる。既存の金融ビジネスを補助・強化するものから代替・変革するものまで、また、既に普及しているものから試行段階にあるものまで、多様な広がりや可能性を見せている。一例として、ブロックチェーン(※3)と呼ばれる技術は、その技術の一部が活用される形で、ビットコインに代表されるように、送金・決済に既に利用されているが、将来的には、決済インフラを抜本的に変えうる可能性を秘めているとされる。現に、NASDAQやNYSEがその取り込みに向けて検討を始めたほか、三菱UFJFGやみずほFGを含む世界大手30金融機関(※4)が協働で同技術を用いた決済の検討を開始している。

フィンテックを巡る動きは、今後さらに活発化すると思われる。これまで、フィンテックを牽引してきたのは、IT企業等の異業種・新興勢力であったが、現在は、欧米金融機関を中心に金融業界がキャッチアップをしようとしている状況にあると言え、競争や提携の動きがさらに強まっていくと思われる。日本の場合、欧米に比べて、規制上の制約もあり、全体としてフィンテックの分野では後れをとっているが、大手行をはじめ、フィンテックへの対応や取り込みを積極化しつつある。また、フィンテックの普及を見据えて、銀行の業務範囲規制の見直し等が金融審議会で検討されているなど、制度面の整備も進められようとしている。

将来的にフィンテックが興隆していけば、金融ビジネスのあり方や金融システムそのものが大きく変わっていく可能性も考えられるが、現時点では、具体的な将来像は見通しにくいと言える。既存の金融機関にとって、フィンテックは脅威にも好機にもなりえることから、経営戦略上、どのように位置付け対応していくのか、今後より注目されるだろう。

(※1)フィンテック(FinTech)は、Finance(またはFinancial)とTechnologyを掛け合わせた造語である。その意味するところは、話し手や文脈によって多少異なるため、正確な定義は示されないが、IT・デジタル分野の技術を金融分野に取り込んだ新たな金融商品・サービスやそれを取り扱う企業のことを指すものと言える。
(※2)経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」資料等による。
(※3)ブロックチェーン(blockchain)は、取引情報を暗号技術によって分散型の電子帳簿に記録する技術で、連鎖的に蓄積・更新する仕組みであることから、改ざんに強いとされる。取引記録を特定の主体に集積する必要がなく、ネットワーク全体で共有することができる。
(※4)R3CEV LLC “PRESS RELEASE: R3 assembles expert technology team to lead distributed ledger initiative”(2015年11月19日)

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