「フジヤマ債(?)」市場の今後

2015年7月14日

先月の6月24日、国内において初のオフショア人民元建て債券の発行が行われ、7月にも1件の発行が続いた。そもそもオフショア人民元建て債券とは何かといえば、中国本土外の市場において発行される人民元建て債券のことである。その大半は香港市場で発行されているが、近年は発行市場が世界各地に広がっている。発行市場によって、香港なら「点心債」、シンガポールでは「獅城債(Lion City Bond)」、フランスでは「凱旋債(Arc de Triomphe Bond)」といった愛称が付けられている。中国人民銀行の発表によれば、2014年末時点の世界全体の発行残高は5,000億元(約10兆円)を超えた。日本国内では「フジヤマ債」や「ラーメン債」等の愛称が候補に挙がっているそうだ。

人民元はいまだ国際通貨となるには至っていないものの、中国の国策として国際化に向けた規制緩和が進むとともに、決済での利用が急速に拡大しつつある。国際銀行間通信協会(SWIFT)の発表に基づくと人民元による決済額は2013年5月の世界13位から2015年5月は5位に躍進している。中国の対世界貿易規模等を考慮すれば今後も更なる利用拡大が見込まれる。わが国では今年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」で東京の国際金融センターとしての地位向上と日本企業の海外進出支援に向けた施策の必要性が訴えられている。人民元の国際化が進む中、オフショア人民元建て債券市場の創設はまさに東京の金融センターとしての競争力向上に向けた一つの施策と言えるだろう。

では今後の東京「フジヤマ債(?)」市場はどうなるか。日本の対中ビジネスの規模や、人民元の自由化が進展していることに鑑みると、国内企業の人民元の調達需要は増加が期待され、国内金融機関による発行も増加が見込まれる。また、中国自体が人民元の国際化に向けてオフショア市場の拡大を奨励していることを考えれば、中国の金融機関による東京での発行も見込まれよう。

無論、東京市場の人民元ビジネスにおけるインフラは香港やシンガポール等の既存のオフショア人民元市場と比較して未熟である。今後、通貨スワップ協定(※1)の締結やRQFII(※2)による投資枠の獲得及び人民元決済銀行の設立等により、人民元ビジネスの環境を整備していく必要があるだろう。オフショア人民元建て債券の発行を起点として、東京における人民元ビジネスが拡大し、ひいては日本企業の対中ビジネスの拡大につながることを期待したい。

(※1)中国との通貨スワップは、その協定の目的に人民元建て貿易と投資の促進を掲げており、人民元の流動性を強化する側面を持つ。
(※2)人民元適格域外機関投資家(Renminbi Qualified Foreign Institutional Investor)。中国政府により指定されると、オフショア人民元を用いて定められた上限額まで中国の金融証券市場に投資できる制度。

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