日本の経験と米国の公的資金注入

2008年9月25日

サブプライムローン問題に端を発する、米国を中心とした金融システムの不安が継続している。FRBにより公的資金の色彩が濃い流動性供給が進められているが、1990年代後半の日本の経験をレビューし、比較してみよう。

日本の公的資金の利用は、預金保険機構(以下、預保)が主たる担い手であった。預保が資金調達をする際に設けられた政府保証枠の合計が、言わば政府が用意した各種セーフティー・ネットの合計額であり、ピーク時には70兆円に達している。預保は実質的な債務超過状態となり、調達資金の返済は、見合い資産のある資本増強や資産買取りについてはその回収資金を充て、見合い資産のない金銭贈与等は毎年の預金保険料が充てられている。

日銀も破綻金融機関向け特融等で、金融システムの安定化に向けた様々な資金を供給したが、やはり中央銀行たる日銀の最大の役割は流動性の供給である。カウンターパーティー・リスクの増大による短期市場の混乱はかつての日本でもみられ、資金ショートによる破綻を防止する観点から、資金を出し手から吸い上げ、取り手に供給するという短期金融市場の機能そのものに日銀が関与せざるを得なくなったのである。量的緩和政策については、法定準備の4~5兆円に上乗せして、最終的には30~35兆円を目標とした。

経済環境等が異なるが、これらの事例の名目GDP比を単純に米国に当てはめた場合、ペイオフコストを超える預金保護等の必要性が低いため、資本増強3,500億ドル、資産買取り2,800億ドルが中心となる。

流動性供給については、日銀が短期金融市場の機能を奪うまでに資金を供給したが、資金吸収手段が限られるFRBは、ゼロ金利にしない限りこうした状況は作り出せない。だが、準備預金への付利を前倒し実施することで、流動性供給がより行いやすくなり、充実していくと見られる。

一方、日本では預保が金融機関に対する資本増強、資産買取りのビークルとなったが、米国もこうした仕組みを整えることが必要になるだろう。なぜなら、流動性への懸念は金融機関の(実質的な)資本不足が背景で、資本不足だと見られるからこそ資金調達リスクが台頭するためである。米国ではエクイティ性の公的資金は、実質的にはまだGSEのみで極めて小規模である。また、金融機関のバランスシートの悪化が、資産の投売りとなってさらなる資産価値の劣化を招いてきた。これは日本の資産デフレと同じであり、今後も続く恐れがある。負の循環を遮断するためには、大規模な資本調達が必要となるが、金融機関がこれまでに調達した資本がすでに劣化し、追加調達が困難になるのであれば、公的部門の役割が注目されることになる。日本で実施された公的資本増強は、すでに8割超が回収されており、買い取った資産も98%回収できている。時間を買うことに成功したとも言えそうだ。

本邦の事例では、資金繰りショートによる破綻と、与信のリスクを取れるレベルまで金融システムを改善させたが、不良債権比率の低下そのものが景気回復に結びついたわけではない。日本と比べ、現在の米国で異なっている経済環境は、デフレ状態にないことであり、実質ゼロ金利が実現し、さらに利下げの余地も残されている点であろう。また、ドルの下落によって経済の落ち込みを純輸出がフォローできている。こうした点は、現在の米国に優位さがあり、金融システム不安と短期金融市場での資金調達リスクを遮断した後は、景気回復による不良債権比率の低下を図っていくことになるだろう。

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