2012年02月13日
サマリー
◆資本不足銀行のアクション・プランは、EBAが2011年12月8日に公表した、欧州銀行の資本増強に関する正式なレコメンデーション(EBAレコメンデーション)により、2012年1月20日までに提出が求められていた。
◆EBAの集計結果によると、アクション・プランは、それがすべて実現した場合、当初の資本不足額(約780億ユーロ)を26%上回る資本増強が可能であるという結果が出ている。
◆提出されたアクション・プランのメソッドの内訳を見ると、全体の77%(当初資本不足額の96%)が自己資本の増加、23%がリスク・アセット(RWA)の圧縮となっている。
◆提出されたアクション・プランは、2月中を通じて、規制管轄当局とEBAによってレビューされる。アクション・プランを提出した資本不足銀行は、3月上旬に、規制管轄当局からのガイダンスを受領する見込みとされている。
◆そのため、アクション・プランは、修正や追加を迫られる可能性があり、今回の集計結果は現時点では暫定のものということになる。EBAは、信頼性や合理性の検証が必要となるメソッドの具体例として、内部留保計画(2012年上半期分)、RWA計測手法の変更、資産売却を挙げている。
◆RWA圧縮が全体の23%に過ぎなかった点は、驚きをもたらすものであったといえよう。とはいえ、この結果は、単に(全体の7%にとどまった)資産売却が思ったように進まなかっただけと見ることも可能である。
◆また、EBAレコメンデーションがRWA計測手法の変更によるRWA圧縮は原則として認めないとしていたにもかかわらず、このメソッドの提出が全体の9%を占めたという事実からは、RWA圧縮へのニーズが痛切なものであることが伝わってこよう。
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