EBA、欧州銀行のデレバレッジ防止は困難か

欧州銀行資本増強プログラム正式版:2012年6月末までにCT1比率9%以上へ

RSS
  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2011年12月8日、欧州銀行監督機構(EBA)は、2011年10月26日のEU首脳会議の決定に基づく欧州銀行の資本増強(欧州銀行資本増強プログラム)に関する正式なレコメンデーション(EBAレコメンデーション)を公表している。

◆欧州銀行資本増強プログラムは、昨今のユーロ危機にかんがみ、EU域内の主要銀行に対し、2012年6月末までに、自己資本比率を「一時的に」、ソブリン債のエクスポージャーを2011年9月末時点の時価評価に基づいて織り込んだ上で、普通株等Tier1(CT1)比率9%まで引き上げることを要求するものである。

◆これは、CT1比率を9%に引き上げると同時に、ソブリン債の保有がもたらしうる潜在的な損失を吸収するための資本バッファー(ソブリン資本バッファー)を上乗せすることを要求するものである。そのため、資本不足額は、CT1比率9%を達成するためのCT1不足額とソブリン資本バッファーの合計である(2011年9月末時点の統計に基づき算出)。

◆EBAレコメンデーションは、EUストレステストではない。そのため、ここで銀行が提供する数値には、ストレスシナリオが適用されていない。

◆資本不足額は、全体で約1,147億ユーロであった(2011年10月26日に公表された暫定資本不足額は全体で約1,064億ユーロとされていた)。

◆銀行は、資本不足額の解消方法として、(「増資」とは呼べない)リスク・アセットの圧縮も認められる。もっとも、過剰なデレバレッジや信用収縮を防止すべく、銀行は、その方法につき、2012年1月20日までにアクション・プランとして提出し、規制管轄当局の承認(EBAとの協議を要する)を得なければならない。

◆このように、EBAはデレバレッジや信用収縮に慎重な姿勢を見せているが、2011年10月26日の暫定資本不足額公表以後、純粋な増資を宣言した銀行は一行のみであり、その他の銀行はリスク・アセットの圧縮による資本不足額の解消を模索しているという。とりわけ、暫定資本不足額に比して資本不足額が大幅に増加したドイツの銀行にとっては、新規の株式発行は困難なオプションとなるであろう。

◆こういった状況から、アクション・プランの内容は、リスク・アセットの圧縮にカテゴライズされる方法が多数を占めることが予想される。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート