2011年12月19日
サマリー
◆欧州銀行資本増強プログラムは、昨今のユーロ危機にかんがみ、EU域内の主要銀行に対し、2012年6月末までに、自己資本比率を「一時的に」、ソブリン債のエクスポージャーを2011年9月末時点の時価評価に基づいて織り込んだ上で、普通株等Tier1(CT1)比率9%まで引き上げることを要求するものである。
◆これは、CT1比率を9%に引き上げると同時に、ソブリン債の保有がもたらしうる潜在的な損失を吸収するための資本バッファー(ソブリン資本バッファー)を上乗せすることを要求するものである。そのため、資本不足額は、CT1比率9%を達成するためのCT1不足額とソブリン資本バッファーの合計である(2011年9月末時点の統計に基づき算出)。
◆EBAレコメンデーションは、EUストレステストではない。そのため、ここで銀行が提供する数値には、ストレスシナリオが適用されていない。
◆資本不足額は、全体で約1,147億ユーロであった(2011年10月26日に公表された暫定資本不足額は全体で約1,064億ユーロとされていた)。
◆銀行は、資本不足額の解消方法として、(「増資」とは呼べない)リスク・アセットの圧縮も認められる。もっとも、過剰なデレバレッジや信用収縮を防止すべく、銀行は、その方法につき、2012年1月20日までにアクション・プランとして提出し、規制管轄当局の承認(EBAとの協議を要する)を得なければならない。
◆このように、EBAはデレバレッジや信用収縮に慎重な姿勢を見せているが、2011年10月26日の暫定資本不足額公表以後、純粋な増資を宣言した銀行は一行のみであり、その他の銀行はリスク・アセットの圧縮による資本不足額の解消を模索しているという。とりわけ、暫定資本不足額に比して資本不足額が大幅に増加したドイツの銀行にとっては、新規の株式発行は困難なオプションとなるであろう。
◆こういった状況から、アクション・プランの内容は、リスク・アセットの圧縮にカテゴライズされる方法が多数を占めることが予想される。
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