SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ

「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2023年4月14日、欧州委員会は、SFDR(EUを拠点とする資産運用会社等のサステナビリティ開示規制)のQ&Aを更新している。

◆ここで更新されたSFDRのQ&A(更新Q&A)は、EUの銀行・証券・保険の監督当局(ESAs)から寄せられた質問(2022年9月9日公表)に対する回答をその内容としており、市場関係者が待望していたものである。

◆更新Q&Aは、運用商品を9条ファンドに分類するためのハードルを下げた、という点にその意義がある。

◆まず、更新Q&Aが、「サステナブル投資」の定義のうち、「‘E’又は‘S’の促進に貢献することを目的とした経済活動(への投資であること)」という要件の解釈について、「何ら最低水準等の定めはなく、自社で決めた内容を開示することで足りる」としたことにより、9条ファンドから8条ファンドへの「格下げ」というトレンドが終焉する可能性がある。

◆また、更新Q&Aが、ESAsステートメントの厳格な解釈、すなわち、9条ファンドは「(現金及びヘッジ目的の投資を除いて)100%『サステナブル投資』で構成」という要件を緩和し、「‘EU Paris-aligned Benchmarks’(PAB)又は‘EU Climate Transition Benchmarks’(CTB)にトラックするパッシブ・ファンドであれば、自動的に9条ファンドに分類可能」としたことにより、9条ファンドに占めるパッシブ・ファンドの市場シェアが増加する可能性がある。

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