2012年07月18日
サマリー
◆概要レポートは、EBAが2011年12月8日に公表した、欧州銀行の資本増強に関する正式なレコメンデーション(EBAレコメンデーション)をフォローするものとなっている。
◆EBAレコメンデーションは、EU域内の銀行に対し、2012年6月末までに、自己資本比率を「一時的に」、ソブリン債のエクスポージャーを2011年9月末時点の時価評価に基づいて織り込んだ上で、普通株等Tier1比率9%まで引き上げることを要求するものである。
◆概要レポートによれば、資本不足銀行27行は、2012年6月末時点で、当初の資本不足額(約760億ユーロ)を大きく上回る、約944億ユーロ相当の資本増強を達成している。
◆資本増強のメソッドの内訳を見ると、全体の76%が自己資本の増加、24%がリスク・アセット(RWA)の圧縮となっている。
◆貸出減少の規模は、2011年9月末時点における資本不足銀行全体のRWAの0.62%のみの減少にとどまっており、懸念された大規模なデレバレッジは生じなかった。
◆27行の資本不足銀行のうち、7行は、資本増強のメソッドとして公的支援を受けている。
◆概要レポートは、各加盟国の規制当局が提出した資料に基づく暫定結果に過ぎない。そこで、EBAは、2012年9月に、資本不足銀行の財務報告(2012年6月末時点)に基づく最終報告を公表するとしている。
◆もっとも、銀行の資本不足を解消したところで、欧州危機の根幹にある、銀行のバランスシートと政府財政との間の負のスパイラルに歯止めをかけることはできない。そのため、資本増強の成功をもって、欧州危機の解決に大きく前進したと考えるのは早計だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ユーロ圏複合危機に風穴は開いたか?
重要なのは決まったことではなく決まらなかったことの今後
2012年07月03日
-
欧州資本不足銀行、資産圧縮は23%のみ?
資本不足解消計画の集計結果公表(EBA):計画の実現可能性の審査は2月中に
2012年02月13日
-
EBA、欧州銀行のデレバレッジ防止は困難か
欧州銀行資本増強プログラム正式版:2012年6月末までにCT1比率9%以上へ
2011年12月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日