2011年08月02日
サマリー
◆CRDⅣドラフトのメインテーマは、バーゼルⅢのEUルールへの「落とし込み」である。CRDⅣドラフトの公表により、EUは、世界で最初にバーゼルⅢのルール化手続きに着手した管轄となっている。キーワードは、“SingleRuleBook”である。
◆CRDⅣドラフトの公表に前後して、その“SingleRuleBook”というキーワードが独り歩きしたせいか、EU加盟国の裁量が制限されるという懸念が相次いだが、これはカウンターシクリカルな資本バッファーの弾力的な運用により解消されうることが明らかになっている。
◆CRDⅣドラフトは、バーゼルⅢの内容を基本的に尊重しつつ、細部ではバーゼルⅢと異なる(バーゼルⅢを緩和した)提案をしている。例えば、バーゼルⅢでは、ダブル・ギアリングを防止すべく、連結対象外の金融機関(保険会社等)への重要な出資の普通株等Tier1からの限度額控除が提案されているが、CRDⅣドラフトにはこのような提案は含まれていない。また、CRDドラフトでは、バーゼルⅢと異なり、銀行の完全連結子会社による普通株式の発行に伴って生じる少数株主持分を、最低所要水準及び資本保全バッファーのみならず、カウンターシクリカルな資本保全バッファーにも充当することを認める提案をしている。
◆もっとも、CRDⅣドラフトは、バーゼルⅢには含まれていない提案もしている。その一つが、罰則規定であり、「年間売上高(前年度)の10%」という罰金を提案している。
◆CRDⅣドラフトは、2013年1月から適用が開始されるバーゼルⅢに合わせて、2012年末までに正式ルールとされることが想定されている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
カバード・ボンド、「ベイルイン」の対象外か?
規制上の優遇措置からカバード・ボンド市場の更なる発展が見込まれる
2012年02月09日
-
UKフィニッシュ、海外オペレーションは除外?
ICB最終報告に対する政府見解:リングフェンス規制の適用除外も検討
2012年01月12日
-
英国銀行規制改革、スタンス軟化の兆し
ホワイトペーパー公表:「UK フィニッシュ」は健在も、レバレッジは軟化
2012年06月20日
-
欧州資本不足銀行、資産圧縮は23%のみ?
資本不足解消計画の集計結果公表(EBA):計画の実現可能性の審査は2月中に
2012年02月13日
-
EUの金融規制改革における英国のポジション
~英国は金融立国としての地位を保てるか~『大和総研調査季報』 2012年春季号(Vol.6)掲載
2012年07月02日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日