利上げで米国は景気後退に陥るか

長期金利の急上昇による株価下落、逆資産効果に要警戒

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2022年05月25日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 佐藤 光
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎

サマリー

◆米国の内需のうち、住宅投資は特に金利に敏感であり、今回の利上げ局面においても調整が見込まれる。ただし、家計のバランスシートにはリーマン・ショック前のような過度なレバレッジは見られず、住宅市場の調整が景気後退を引き起こす可能性は低い。

◆過去、緩やかな長期金利の上昇であれば、経済の回復を示し、株価のマイナス要因にはならない一方で、長期金利の急上昇は株式市場に動揺をもたらしてきた。株価の下落は、個人消費の減少を通じて設備投資や雇用の悪化をもたらす可能性がある。家計による株式保有が増加していることもあり、利上げの実体経済への波及経路として、とりわけ株価の動向には注意が必要である。

◆各種先行研究におけるバランスシート政策の効果やリーマン・ショック以前のリスクプレミアムを参考に、FRBのバランスシート縮小後における長期金利の目安を検討すると、3.5~4.4%程度になるとみられる。この程度の長期金利の上昇であれば、リスクシミュレーションからは米国経済は景気後退を回避すると見込まれる。

◆ただし、高インフレが定着すると、リスクプレミアムの拡大によって長期金利が一段と上昇しやすく、それが更なる株価下落を引き起こす可能性がある。バランスシート縮小後の長期金利が5%台後半を超えるかどうかが、米国が景気後退に陥る1つの目安となろう。

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