サマリー
◆米国の内需のうち、住宅投資は特に金利に敏感であり、今回の利上げ局面においても調整が見込まれる。ただし、家計のバランスシートにはリーマン・ショック前のような過度なレバレッジは見られず、住宅市場の調整が景気後退を引き起こす可能性は低い。
◆過去、緩やかな長期金利の上昇であれば、経済の回復を示し、株価のマイナス要因にはならない一方で、長期金利の急上昇は株式市場に動揺をもたらしてきた。株価の下落は、個人消費の減少を通じて設備投資や雇用の悪化をもたらす可能性がある。家計による株式保有が増加していることもあり、利上げの実体経済への波及経路として、とりわけ株価の動向には注意が必要である。
◆各種先行研究におけるバランスシート政策の効果やリーマン・ショック以前のリスクプレミアムを参考に、FRBのバランスシート縮小後における長期金利の目安を検討すると、3.5~4.4%程度になるとみられる。この程度の長期金利の上昇であれば、リスクシミュレーションからは米国経済は景気後退を回避すると見込まれる。
◆ただし、高インフレが定着すると、リスクプレミアムの拡大によって長期金利が一段と上昇しやすく、それが更なる株価下落を引き起こす可能性がある。バランスシート縮小後の長期金利が5%台後半を超えるかどうかが、米国が景気後退に陥る1つの目安となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
第213回日本経済予測
インフレ高進・ウクライナ危機下の世界経済の行方~①日インフレ、②米景気後退リスク、③世界的供給問題、を検証
2022年05月24日
-
米国経済見通し 景気後退の真実味はいかほどか?
現時点で景気後退を確信するのは尚早
2022年05月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
-
政府閉鎖前の雇用環境は緩やかな悪化が継続
2025年9月米雇用統計:雇用者数は増加に転じるも、回復は緩やか
2025年11月21日
-
統計公表停止中、米雇用環境に変化はあるか
足元は悪化基調が継続も、先行きは悪化一辺倒ではない
2025年11月14日

