サマリー
◆2026年2月20日、米連邦最高裁判所はIEEPA(国家緊急経済権限法)に基づく追加関税措置に対して無効判決を下した。判決を受け、トランプ大統領は即日、1974年通商法第122条に基づく一律10%(後にSNSで15%に引き上げ表明)の追加関税措置を導入すると発表した。大統領令では重要鉱物・エネルギー・農産物・1962年通商拡大法第232条対象品、USMCA対象品を除外し、2月24日から施行するとされた。
◆122条関税は国際収支の改善を目的とする暫定措置で、議会による延長の承認が得られなければ、150日が期限となる。一律関税は景気悪化やインフレの懸念から民主・共和両党に反対も多く、延長に向けた議会承認は困難とみられる。このため122条関税は短期的措置に止まり、いずれ1974年通商法第301条関税や232条関税へ移行する可能性が高い。301条関税は対象品目を広げやすいが国・地域は限定されやすく、232条関税はその逆という特性がある。また両者とも調査義務があり、着手から実施まで1年前後を要するため、IEEPA関税や122条関税のような迅速な運用は難しい。
◆米国経済への影響としては、The Budget Lab at Yaleによれば、IEEPA関税無効により実効関税率が16.0%から9.1%へ低下し、PCE価格指数の押し上げ幅も1.2%から0.6%へ縮小、2026年10-12月期の実質GDP成長率への影響も▲0.3%から+0.1%へ改善する見通しで、関税の景気・インフレ面の悪影響は緩和するとみられる。なお、122条関税の影響に関しては、延長されない場合には概ねIEEPA無効後の状況に収斂することになる。301条関税・232条関税へと移行する場合、広範囲かつ機動的なIEEPA関税ほどの高い実効関税率を実現することは難しく、結果的に景気やインフレに対する悪影響も抑制されることが予想される。
◆IEEPA関税無効により、景気への悪影響が抑制されることは安心材料だが、関税収入が抑制されることで、財政赤字が拡大し得ることはリスク要因となろう。また、IEEPA関税によるこれまでの関税収入の取り扱いや、IEEPA関税を前提とした各国・地域との通商協議の合意の継続性など、米国の通商政策を巡る予見可能性が低下している点も注意を要する。
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