サマリー
◆米国の主要株価指数は下落局面が続いている。高インフレが続く中で、FRBによる金融引き締めが大掛かりになり、景気を急激に冷やすとの思惑が強まったことが株価下落の背景にある。株式市場は、FRBの金融引き締めに対する前のめりな姿勢や需要抑制に対する意志の強さを受け、先行きの景気後退に身構えているといえる。
◆しかし、景気後退を現時点で確信するのは尚早だろう。主要な経済指標は堅調で景気後退に対しては一定のバッファーがある。FRBのタカ派的な見解が目につきやすい一方で、景気後退懸念をけん制しようとする声も聞こえるようになってきた。インフレに関しても、コアCPIやPCEを中心に減速傾向が見られている。景気変動を増幅させる金融の不安定性に関しても、2000年代初頭のドットコム・バブルや2000年代後半の不動産バブルに代表される過去の過熱時と比べても抑制されている。
◆仮に景気後退に陥るとすれば、上に挙げた安心材料が全面的に覆される、リスクシナリオという位置づけである。例えば、インフレが今後もさらに加速し、利上げが中立金利を大幅に上回るまで行われることや、現時点で認識されていない金融の不安定性が高まることなどが挙げられよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
米国経済見通し 過去とは異なる政府閉鎖
政府閉鎖による悪影響は従来よりも長期化する恐れ
2025年10月21日
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
純債務って何?高市総理が目指す財政指標の意味
2025年10月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

