サマリー
◆米国・イラン間の覚書により、日本および世界経済の下振れリスクは低下した。だが、最終合意までの道のりは険しく、原油の価格面での経済活動への影響には引き続き注意が必要だ。日本の輸入原油価格は代替調達の拡大もあってWTIを明確に上回る水準にあり、足元の状況が続くと、輸入原油価格は2027年1-3月期で前年比+30%超となる。その後の伸びは落ち着いても、消費者物価への影響は2027年度まで続きそうだ。今後は交易損失の拡大に加え、原油輸入量の回復などによる純輸出の悪化も見込まれるため、日本経済への下押し圧力が徐々に強まる可能性がある。
◆中東情勢の影響で日本および世界経済が下押しされる中、人工知能(AI)需要の増加が経済活動を下支えしている。世界貿易機関(WTO)の定義をもとに集計した「AI関連財」は、国内生産を2024年から継続的に押し上げている。もっとも、日本のAI関連財の需要の取り込み度合いは主要7カ国(G7)の中で低位にあり、輸出競争力の相対的な低さや、国内投資による供給力強化の遅れを示唆している。非AI関連財でも同様であり、国内投資の拡大などによる国際競争力の引き上げは引き続き課題だ。
◆2026年6月17日に公表された社会保障国民会議の実務者会議の議長案によると、中低所得の現役勤労者向けの「所得に連動したきめ細かな給付」(所得連動給付)を2029年秋頃に本格導入し、それまでの「つなぎ」として2027年4月から2年間、食料品の消費税率を1%に引き下げる。さらに、消費税率1%相当分の範囲内で2027年秋に所得連動給付を先行導入する。先行導入により、消費減税から給付付き税額控除への移行がより円滑になる点は評価される。2029年4月から秋頃までの間は家計支援が一時的に縮小するものの、消費減税は物価高対策が主な目的とされるため、その時期に名目賃金が物価上昇率を上回っていれば、対策の必要性は低いだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「食料品の消費税率1%+中低所得勤労者への所得連動給付」案が軸に
先行導入の所得連動給付は年間給与所得対比+0.4%程度の可能性
2026年06月19日
-
新たな局面を迎えた中東情勢、原油価格高止まりで海外への所得流出は拡大へ
半導体需給の緩和や外需低迷が今後の交易損失の下押し拡大要因に
2026年06月16日
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2026年7月号(No.476)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2026年06月24日
-
地政学的緊張が促すAI開発競争
2026年06月24日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
最新のレポート・コラム
-
中間配当の導入は株価を動かすか
開示直後は好感されるも、効果のインパクトや持続力は弱い
2026年07月17日
-
経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」による企業買収行動指針のポイント・Q&A(案)
指針の趣旨を明確化~「企業価値」や「望ましい買収」とは?~
2026年07月17日
-
「トランプ口座」始動、未来の株主多数輩出
口座開設、「収益獲得」ではなく「次世代投資家との接点」
2026年07月17日
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

