サマリー
◆2026年の実質GDP成長率は前年比+0.8%と見込んでいる。2025年(実績見込みで同+1.2%)から減速するが、これは2025年で+0.6%ptだった「成長のゲタ」(各四半期の前期比の伸び率がゼロで達成できる実質GDP成長率)が2026年に+0.0%ptへと縮小することが影響している。実態としては2025年と同程度の緩やかな景気回復を見込んでおり、個人消費や設備投資などが増加するだろう。
◆2026年は、「賃上げなどによる家計の所得環境の改善」「政府の経済対策」「緩和的な金融環境の継続」「高水準の家計貯蓄」などが日本経済を下支えしたり、押し上げたりするとみている。一方で経済の下振れリスク要因も多く、「トランプ関税」「日中関係の悪化」「中東情勢・ウクライナ情勢の緊迫化(原油価格の高騰)」「円相場の急落」「国内金利の上昇」などが挙げられる。
◆「責任ある積極財政」を掲げる高市早苗政権の財政運営も注目される。近年、国・地方の純債務残高対GDP比はプライマリーバランス(PB)が赤字でも低下しているが、高インフレを背景に名目GDP成長率が名目実効金利を上回ったことが影響している。当面はこうした状況が続くが、いずれ金利・成長率格差はなくなったり、金利が上回ったりするとみられる。PBを黒字化しなければ、純債務残高対GDP比の引き下げは難しくなるだろう。高市政権は「危機管理投資」などで成長を後押ししているが、その成果は民間企業の行動次第であり、予見することはできない。潜在成長率が加速しない事態にも備えてPBに常に目配りし、国債市場からの信認を維持する取り組みが必要だ。
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