サマリー
◆ドル円レートは2026年6月末に一時162円台と約40年ぶりの安値を付けた。当社のマクロモデルで推計すると、通常の経済状態における円安ドル高は日本経済にネットでプラスの影響をもたらすが、円安の恩恵が広く行き渡るわけではない。多くの企業や家計にとっては、輸入物価の上昇による負担増の影響の方が目立つだろう。加えて、足元では企業の価格転嫁の進展や、中東情勢の悪化等による輸出の下押し、日中関係の悪化による中国人訪日客数の減少などが円安のプラス効果を相殺したとみられる。こうした影響を考慮すると、10%の円安ドル高による直近1年間の実質GDPへの影響は▲0.14%程度だったと試算される。
◆ドル円レートの動きは日米の実質金利差で説明されることが多いが、2025年秋以降は両者の関係が薄れ、実質金利差が縮小傾向にある中で円安ドル高が進んでいる。米国の実質金利とドル円レートとの関係は直近でも安定しており、日本の金利上昇による円高圧力は限定的だったようだ。日銀の金融政策が正常化の途上にあり、利上げを継続しているものの金利水準が物価上昇率などに比して低く、経済実態を踏まえた金利水準(中立金利)を下回っていることなどが背景にあるとみられる。こうした見方が実態を捉えているのであれば、高水準のインフレ率によって米金利の先高観が強いうちは円安ドル高が進みやすい。一方、日銀が利上げを続けても、当面は円高基調に反転しにくい可能性がある。
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