サマリー
◆2025年4月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+2.0%と7カ月連続で増加した一方、季節調整値では前月比▲2.7%と2カ月連続で減少した。輸入金額は前年比▲2.2%と2カ月ぶりに減少し、季節調整値でも前月比▲1.4%と2カ月ぶりに減少した。これを受け、貿易収支は▲1,158億円と3カ月ぶりの赤字、季節調整値では▲4,089億円と2カ月連続の赤字となった。
◆2025年4月の輸出数量は前月比▲1.7%と2カ月連続で減少した。ただし、振れを均せば横ばい圏内で推移している。品目別では、自動車関連財や前月好調だった半導体等製造装置を中心に幅広い品目が減少した。地域別では、米国向け(同+0.9%)は増加した一方、2月と3月の水準が高かったEU向け(同▲7.0%)やアジア向け(同▲1.6%)の減少が指数全体を押し下げた。アジア向けのうち中国向け(同▲3.9%)も減少した。
◆先行きの輸出数量は横ばい圏で推移するとみているが、不確実性は引き続き高い。現時点で主要輸出先における実体経済の大幅な悪化は確認できないが、「トランプ関税」や、その動向を巡る不確実性を背景に各国・地域で設備投資や個人消費が腰折れすれば、日本の輸出にも逆風となる。
◆4月は自動車への品目別関税が発動されたが、米国向けの自動車輸出の数量は前年から増加した。在米日系自動車メーカーの4月時点の新車在庫日数は1~3カ月程度であることから、追加関税前の流通在庫が底をつくのは5月以降とみられる。日系自動車メーカーの多くは、日米交渉の進展なども注視しつつ、関税引き上げ分を現地販売価格に転嫁するタイミングを検討しているとみられ、輸出数量への本格的な影響が発現するのは夏以降になる可能性がある。
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