サマリー
◆2024年10月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+3.1%と2カ月ぶりに増加した。前年同時期における自動車挽回生産の裏の影響が下押し要因となる中でも、半導体等製造装置などが下支えしたことで底堅い結果となった。輸出金額の季節調整値は前月比▲0.7%と2カ月ぶりに減少した。輸入金額は前年比+0.4%と7カ月連続で増加したが、前年比での円高の進行を背景に伸び率は鈍化傾向にある。輸入金額全体の季節調整値は前月比+0.2%と3カ月ぶりに増加した。貿易収支は▲4,612億円と4カ月連続の赤字(季節調整値では▲3,577億円と41カ月連続の赤字)となった。
◆10月の輸出数量は前月比▲1.6%と2カ月ぶりに減少した。自動車や半導体等製造装置が好調だったものの、鉄鋼やプラスチック、自動車の部分品などの中間財が全体を押し下げた。米国におけるハリケーンの影響などによって、一時的に部材の需要が抑制されたとみられる。地域別に見ると、米国向け(同▲12.8%)やEU向け(同▲1.2%)は減少した一方、アジア向け(同+0.3%)は増加した。
◆先行きの輸出数量は均して見れば横ばい圏で推移するとみている。目先では自動車の供給制約の緩和を受けた挽回輸出やシリコンサイクル(世界半導体市場に見られる循環)の回復を背景とした半導体関連財の輸出が期待できる一方、米国における緩やかな景気減速を主因に輸出全体は伸び悩む見込みだ。なお、2025年1月に米大統領就任予定のトランプ氏が掲げる高水準の関税措置が実現すれば、世界的に貿易や景気が停滞するリスクがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2024年9月貿易統計
円高による輸出価格の鈍化で輸出金額は10カ月ぶりの前年割れ
2024年10月17日
-
2024年8月貿易統計
台風や円高進行の影響で輸出金額は自動車を中心に下振れ
2024年09月18日
-
2024年7月貿易統計
輸出数量の伸びが物足りず内容も良くない結果に
2024年08月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日