サマリー
◆2024年7月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+10.3%と8カ月連続で増加したものの、コンセンサス(同+11.5%、Bloomberg調査)を下回った。輸出数量の伸びが冴えず、増加の要因も単月の上振れによるところが大きいことから、実態は数字に見られるほど好調ではない。輸出金額の季節調整値は前月比+1.7%と2カ月ぶりに増加した。輸入金額は前年比+16.6%と4カ月連続で増加し、伸び率は18カ月ぶりの2桁台となった。円安下で幅広い品目の輸入価格が上昇したとみられる。季節調整値は前月比+0.9%であった。以上を受け、貿易収支は▲6,218億円と2カ月ぶりの赤字となり、季節調整値では▲7,552億円と38カ月連続の赤字であった。
◆7月の輸出数量は前月比+1.2%と2カ月連続で増加した。ただし、主因は欧州向けの鉄鋼やアジア向けの船舶など振れが大きい品目の増加であった。主力品目の自動車や半導体等製造装置はいずれも3カ月連続で減少しており、輸出の基調は弱いといえる。輸出数量全体を地域別に見ると、EU向け(同+10.2%)やアジア向け(同+2.0%)が増加した一方、米国向け(同▲2.2%)は減少した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調を辿るとみている。2024年4-6月期実質GDPにおける財輸出額は前期比+0.6%と1年ぶりに増加した。1-3月期は自動車の認証不正問題の影響による輸出の大幅減が目立ったが、こうした状況はすでに解消したようだ。今後は底堅い外需や米欧における利下げ、中国政府による経済対策などを追い風に日本からの輸出が増加しやすい環境へ向かうとみている。なお、米国では足元までの主要な経済指標を俯瞰すると景気後退リスクは限定的であり、短期的には日本の対米輸出が大幅に減少する可能性は高くないとみられる。
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