世界経済の「トランプ離れ」が始まった

RSS

2017年07月21日

  • 児玉 卓

サマリー

7月上旬に開催されたG20ハンブルク・サミットでは、首脳宣言に「保護主義と引き続き戦う」という文言が盛り込まれたが、このこと自体が、保護主義の台頭に対する懸念が(一部の国を除き)共有されていることを物語っている。一方、オランダ経済政策分析局のデータによれば、実際のところ2017年に入って世界貿易は回復傾向にあり、幸いにも保護主義が「スロー・トレード」を長期化、ないしは深刻化させるというシナリオの妥当性は低下しつつある。米国の内政に目を転じれば、懸案のオバマケアの代替法案は再び頓挫した。上下院と大統領が共和党で一本化されたことが、政策運営上必ずしも有利ではないことが明らかになりつつある。昨年11月の米大統領選挙以降、世界経済はトランプ政策次第とみなされることが多かったが、トランプ氏の政策執行能力の貧弱さが露呈されるにつれ、世界経済の「トランプ離れ」が着実に進みつつあるとみてよさそうだ。ユーロ圏経済の堅調に加え、上述の世界貿易統計は、新興アジア地域の内需の持ち直しを示唆している。米国発の加速が見込みにくくなったことは確かだが、緩やかな世界経済の拡大を阻害する懸念材料も減っている。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート