米国経済見通し 正常化が進む金融政策

一方、議論が進まぬ政治・財政

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2017年07月20日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆6月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、FRB(連邦準備制度理事会)のバランスシート縮小の年内開始の方針が示され、FOMC参加者の間で早期開始に対する支持が集まりつつある。だが一方で、インフレ率の鈍化を懸念して、利上げに関しては、当面、様子を見るべきとの意見が広がっている。FOMC参加者の多くは、バランスシート縮小が実体経済、特にインフレ動向に与える影響は軽微と考えていることになるが、資産市場への影響は少なくともゼロではないだろう。実体経済の下押し要因となる可能性についても慎重に見極めていく必要がある。


◆トランプ政権発足以降、最優先課題として取り組んできたオバマケアの廃止・置換は、共和党内の対立によって頓挫し、政権は政策遂行能力の低さを改めて露呈した。休会明けの9月以降の議会では、2018年度予算、債務上限問題という先送りができない議題が控えているが、これらに関しても共和党内で意見対立がある。共和党内の対立が深まれば、今後の政策運営にも影響を及ぼし、企業などからの期待感が根強い税制改革なども、実現が一層困難になる可能性があろう。


◆足下までの経済指標を踏まえると、4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率2%台半ばの成長を見込む。1%台の低成長に留まった前期からの主な加速要因は、個人消費の持ち直しが見込まれることであり、1-3月期の成長鈍化は特殊要因による一過性のものであったという見方を再確認する結果となろう。


◆財政政策が実現する可能性は完全になくなったわけではないが、実現に向けた道筋も全く見えておらず、これまで既定路線とされてきたトランプ政権の政策による景気加速は、リスクシナリオになりつつある。ただし、従前から指摘するように、政策効果を考慮しなかったとしても、先行きの米国経済は潜在成長並みの成長を続ける公算が大きく、政策期待の後退を過度に悲観視する必要はないだろう。

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