サマリー
◆6月のFOMC(連邦公開市場委員会)では、FRB(連邦準備制度理事会)のバランスシート縮小の年内開始の方針が示され、FOMC参加者の間で早期開始に対する支持が集まりつつある。だが一方で、インフレ率の鈍化を懸念して、利上げに関しては、当面、様子を見るべきとの意見が広がっている。FOMC参加者の多くは、バランスシート縮小が実体経済、特にインフレ動向に与える影響は軽微と考えていることになるが、資産市場への影響は少なくともゼロではないだろう。実体経済の下押し要因となる可能性についても慎重に見極めていく必要がある。
◆トランプ政権発足以降、最優先課題として取り組んできたオバマケアの廃止・置換は、共和党内の対立によって頓挫し、政権は政策遂行能力の低さを改めて露呈した。休会明けの9月以降の議会では、2018年度予算、債務上限問題という先送りができない議題が控えているが、これらに関しても共和党内で意見対立がある。共和党内の対立が深まれば、今後の政策運営にも影響を及ぼし、企業などからの期待感が根強い税制改革なども、実現が一層困難になる可能性があろう。
◆足下までの経済指標を踏まえると、4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率2%台半ばの成長を見込む。1%台の低成長に留まった前期からの主な加速要因は、個人消費の持ち直しが見込まれることであり、1-3月期の成長鈍化は特殊要因による一過性のものであったという見方を再確認する結果となろう。
◆財政政策が実現する可能性は完全になくなったわけではないが、実現に向けた道筋も全く見えておらず、これまで既定路線とされてきたトランプ政権の政策による景気加速は、リスクシナリオになりつつある。ただし、従前から指摘するように、政策効果を考慮しなかったとしても、先行きの米国経済は潜在成長並みの成長を続ける公算が大きく、政策期待の後退を過度に悲観視する必要はないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+14.7万人
2025年6月米雇用統計:民間部門の雇用者数は減速も、失業率は低下
2025年07月04日
-
米国経済見通し 駆け込みの反動一巡後の注目点は?
追加関税措置次第となる中、トランプ大統領を“TACO”と嘲るべからず
2025年06月24日
-
FOMC 様子見姿勢を継続
経済指標の基調の捉えにくさと正確性への懸念は利下げ遅延リスクを高める
2025年06月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日