サマリー
◆2025年の中国経済については、不動産不況の行方と2つの前倒しの反動に注意したい。中国は2024年に住宅ローン金利と頭金の割合を大幅に引き下げ、住宅需要の一部が刺激されている。ただし、これが持続的かは疑問符が付く。金融政策は2024年の「中立」から2025年は「適度な緩和」に変更され、一段の利下げ期待が高まっている。住宅価格の下落が続き、住宅ローン金利引き下げの可能性が高まる中、住宅購入が様子見となる懸念がある。2つの前倒しとは、トランプ米大統領による高関税賦課前の中国からの輸出の前倒しと、家電・自動車買い替え促進のための補助金政策を利用した前倒し購入(需要の先食い)である。2025年はそれぞれの反動が懸念される。
◆今後10年程度の長期見通しについて、中国の成長力は大きく低下しよう。これは、(1)人口減少と少子高齢化の急速な進展、(2)住宅需要の減退など総需要の減少、(3)過剰投資と投資効率の低下、(4)それと表裏一体の過剰債務問題、(5)「国進民退」問題、などの構造的な要因が中国の成長力を低下させるためである。大和総研は2026年~2030年の実質GDP成長率を平均で3.8%程度、2031年~2035年を同2.7%程度と予想している。習近平総書記の「2035年までに(実質)GDPや1人当たり収入を(2020年の)2倍にすることは完全に可能である」(2020年10月、第19期中央委員会第5回全体会議での発言)との指摘が実現するには2035年までの年平均で4.7%強の実質成長が必要な計算だ。しかし、大和総研は、年平均の実質GDP成長率は3.9%にとどまり、達成は不可能だと予想をしている。
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