経済・社会構造分析レポート
電力供給不足問題と日本経済

悲観シナリオでは年率平均14兆円超のGDP損失経済社会研究班レポート - No.3 -

2011年7月13日

経済調査部 経済社会研究班
溝端 幹雄
神田 慶司
鈴木 準

サマリー

◆原子力発電所の今後の稼働や再生可能エネルギー発電の導入について、楽観シナリオと悲観シナリオを設定してみると、今夏において、楽観シナリオでは最大1.8%、悲観シナリオでは最大4.8%の電力不足が発生する(月次・全国ベース)。実際の電力不足は地域差が大きくなるとみられる。

◆中長期的には、楽観シナリオでは電力不足が解消するが、悲観シナリオでは不足が長期に続く。いずれのシナリオにせよ、化石燃料の輸入を増加させる火力発電の拡大は、電力料金を引き上げ、CO2排出量を増加させる。また、再生可能エネルギーはCO2排出量の抑制に寄与するが、その導入のためにはやはり電力料金引き上げによるコストを必要とする。

◆電力供給不足は財やサービスの生産を抑制する。電力料金の引き上げは産業や生活のコストを引き上げ、実質所得を引き下げる。化石燃料の輸入増は外需(純輸出)を減らす。景気の悪化は物価の低迷をもたらす。それらマクロ経済への悪影響を失われる実質GDPで測ると、悲観シナリオの場合、2015年度に向かって19.2兆円まで拡大し、今後10年間の平均では年率14兆円超(標準予測GDPの2.5%)に達すると試算される。

◆本稿の試算では、電力需要側での工夫を考慮せず、原発政策の長期停滞を前提として、電力供給不足問題を保守的に(厳しく)評価した。その場合、楽観シナリオですら、マイナスの影響がある程度表れており、悲観シナリオでの損失は非常に大きい。短期と長期の両面から電力政策の再構築が急がれる。

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