サマリー
◆2025年度のふるさと納税受入額は1兆3,314億円と過去最高を更新。本稿では、ふるさと納税のインパクトが特に大きい自治体はどのような特徴を持ち、地域経済や自治体財政にどのような影響を与えているのかを検証した。インパクトの大きさを把握するため、2020年度から2024年度までの寄附受入額を同期間の基準財政需要額で除した比率を用いた。この比率が10%以上の団体(以下「10%群」)は全市区町村の約16%にすぎないが、5年間の寄附受入額全体の約56%を占める。大半は人口10万人未満の小都市・町村であり、返礼品発注を通じた地域経済の下支え効果は大きい。漁業、農業・林業、宿泊・飲食の就業者比率が相対的に高いことも特徴のひとつだ。
◆小都市・町村のふるさと納税の使途について決算統計から検証すると、10%群に属する団体は商工費、公園費、小学校費などで繰入金や寄附金の充当割合が高い。ただし、それに伴って歳出そのものが増加しているとは限らず、従来は地方税など一般財源で賄っていた支出の財源を置き換える形で機能していることも考えられる。10%群の財務指標の改善度はそれ以外の団体に比べて高く、ふるさと納税が起債の抑制や基金積立を通じて財政健全化に寄与した可能性がある。
◆足元では地場産品基準の明確化が進み、2029年にかけて寄附金活用可能額の割合も段階的に引き上げられる。こうした見直しは、自主財源の確保と地域経済の活性化という制度本来の目的に沿うものと評価できる。他方で、返礼品需要への過度な依存は地域事業者の自立を妨げるおそれもある。ふるさと納税を地域活性化策として持続可能なものとするためには、販路開拓や商品開発を通じて事業者の市場競争力を高めるとともに、寄附によって何が実現したのかを住民や寄附者に分かりやすく示していくことが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
返礼品発注事業としてみるふるさと納税の地域活性化インパクト
公共事業から磨き上げ策への転換を
2024年01月23日
-
地方創生10年 人口減に歯止めをかける小規模自治体の 所得向上戦略
観光で集客し、地域資源にちなむ新商品をコトで売るエコシステム
2024年08月20日
-
地方創生10年 そして地方は創生したのか
都市圏単位の目標設定と所得向上策への回帰が再挑戦の課題
2024年07月23日
-
震災復興後も空洞化が進む三陸沿岸・奥尻島
後継者問題を見据えた生業(なりわい)の再生が課題
2024年02月27日
同じカテゴリの最新レポート
-
最高路線価に読む立地の収益力
大都市圏への集中と、商業拠点から観光拠点への主役交代の兆し
2026年07月23日
-
資金繰り支援から企業価値向上支援へ
地域金融機関に求められる企業支援の在り方
2026年07月21日
-
学校施設の廃止後の課題
廃校施設活用状況実態調査の分析
2026年06月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

