サマリー
◆国が2014年に取り組みを開始した地方創生が今年で10年の節目を迎える。もともと、少子高齢化や過疎化等の問題を踏まえ、地域の強みを活かした「稼ぐ力」を強化し、平均所得の向上を図る戦略体系だった。途中、SDGsやSociety5.0の理念が合流したり、デジタル田園都市国家構想に衣替えしたりを経て、成長力確保を踏まえた所得向上への関心は相対的に希薄化したものの、東京一極集中の是正の課題認識は一貫している。
◆一方、東京一極集中には歯止めがかかっていない。2015年から2020年まで5年間の人口増減を見ると、市区町村の約8割の1,419団体で人口減となり、さらにその約6割にあたる882団体は減少率が5%を上回った。逆に東京都特別区の人口は5%増加した。
◆人口10万人未満の小規模団体で人口水準を維持できたケースを見ると大都市圏に多い。「消滅可能性都市」と重なる、都市圏に属さない小規模団体こそ地方創生の主対象となりえるが、こちらは総じて人口減少に歯止めがかかっていない。
◆少子化問題はともかく、災害リスク等の観点で東京一極集中の是正の重要性は変わらない。今後の地方創生の推進にあたっては、人口維持目標の単位を個別市区町村から都市圏としたほうがよい。地方の都市圏に人口を留めるには、所得水準と人口流出との関連を踏まえ、地方創生の第1期で前面に出された所得向上策に回帰することが重要だ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
震災復興後も空洞化が進む三陸沿岸・奥尻島
後継者問題を見据えた生業(なりわい)の再生が課題
2024年02月27日
-
返礼品発注事業としてみるふるさと納税の地域活性化インパクト
公共事業から磨き上げ策への転換を
2024年01月23日
-
地域活性化の成否を地方税ベースの業績評価指標(KPI)で測定する試み
法人住民税と固定資産税評価額による地方創生戦略の評価
2016年09月15日
同じカテゴリの最新レポート
-
持続可能な社会インフラに向けて 水道広域化のスケールメリットの検証と課題
足下のコスト削減よりむしろ技術基盤の強化
2025年04月22日
-
水道管路の性能劣化の現状とその対策
都市部の経年化よりむしろ低密度・人口減地域の投資財源不足が課題
2025年03月14日
-
地方創生10年 職種構成に着眼した東京一極集中の要因と対策
どうして若者は東京を目指すのか
2024年12月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日