貸出先業種でみた地銀・信金の違い

再編後の地域経済エコシステムにおける中小企業金融の担い手

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サマリー

◆銀行と信用金庫で貸出先業種がいかに異なるか。中小企業貸出に焦点をあて検証したところ、建設業、飲食業や生活関連サービス業に対する貸出は件数、残高ともに信用金庫のシェアが高い。奇しくもこれら業種はコロナ禍の影響を強く受けた業種と重なる。実際、コロナ禍の前後で国内銀行を上回って信用金庫の貸出が増えた。

◆貸出先業種が業態によって異なる背景には、業態別のリスク回避に対する姿勢の違いがあると推察される。貸出金利回りと不良債権比率で検証すると信用金庫に比べ銀行はリスク回避的である。銀行の中でも地域一番行はそれ以外の業態に比べそうした傾向が強いと見受けられる。

◆地域金融機関には資金移動インフラ業としての機能と貸出すなわち金融仲介の機能がある。地元自治体の指定金融機関を担うなどインフラとしての地域一番行に対し、二番手行や信用金庫は地域経済エコシステム内で金融仲介を補完する役割を担ってきた。特に信用力の見極めが難しいものの雇用面で地域に欠かせない業種に対する貢献が大きい。地域金融の再編にあたって域内の相互補完関係を崩さないよう注意が必要だ。

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