サマリー
◆米国連邦準備理事会(FRB)はゼロ金利制約に直面して以来、資産買取り等の非伝統的政策手段とフォワードガイダンスを通じた時間軸効果により、金融緩和を継続してきた。しかしバーナンキ議長が13年内に資産買入れ規模の縮小を開始し、14年中頃に買入れを終了する可能性に言及して以来、この効果は剥落に向かっている。結果、市場予想の変化を通じ、実際に政策の変更が行われる前にもかかわらず米国長期債利回りの上昇やドル実効レートの増価が進んでいる。
◆13年後半の連邦公開市場委員会(FOMC)において予想されている米国の金融政策の変更は、債券・為替市場および実体経済にどのような影響を与えるのだろうか。本稿(前編)ではシミュレーションに基づき、想定しうるケースにおける影響を試算した。
◆試算結果によれば、市場予想を超えるペースでの資産圧縮は米国債長期金利の上昇とドルの増価をもたらすものの、その影響は短期的なショックにとどまることが示唆されている。他方、時間軸効果の剥落を端緒とする長期金利の上昇は比較的大きなドルの増価をもたらすと試算された。また、これらの資産圧縮と長期金利上昇は米国の実体経済(生産・物価)にマイナスの影響を与えるものの、その規模は軽微にとどまると推計された。日本経済への影響も軽微にとどまるとみられる。市場予想よりも緩和的な政策が発表された場合には、これらと逆の効果が発生すると見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済中期予測(2014年2月)
牽引役不在の世界経済で試される日本の改革への本気度
2014年02月05日
-
量的緩和・円安でデフレから脱却できるのか?
拡張ドーンブッシュモデルに基づいた構造VAR分析
2013年08月15日
-
QE3縮小後の金利・為替・世界経済(後編)
グローバルマネーフローを中心とした定性的検証
2013年09月09日
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
-
2025年11月全国消費者物価
エネルギー価格の伸び率拡大を食料品価格などの伸び率鈍化が相殺
2025年12月19日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

