QE3縮小後の金利・為替・世界経済(前編)

シミュレーションに基づく定量的分析

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2013年09月09日

  • 小林 俊介

サマリー

◆米国連邦準備理事会(FRB)はゼロ金利制約に直面して以来、資産買取り等の非伝統的政策手段とフォワードガイダンスを通じた時間軸効果により、金融緩和を継続してきた。しかしバーナンキ議長が13年内に資産買入れ規模の縮小を開始し、14年中頃に買入れを終了する可能性に言及して以来、この効果は剥落に向かっている。結果、市場予想の変化を通じ、実際に政策の変更が行われる前にもかかわらず米国長期債利回りの上昇やドル実効レートの増価が進んでいる。


◆13年後半の連邦公開市場委員会(FOMC)において予想されている米国の金融政策の変更は、債券・為替市場および実体経済にどのような影響を与えるのだろうか。本稿(前編)ではシミュレーションに基づき、想定しうるケースにおける影響を試算した。


◆試算結果によれば、市場予想を超えるペースでの資産圧縮は米国債長期金利の上昇とドルの増価をもたらすものの、その影響は短期的なショックにとどまることが示唆されている。他方、時間軸効果の剥落を端緒とする長期金利の上昇は比較的大きなドルの増価をもたらすと試算された。また、これらの資産圧縮と長期金利上昇は米国の実体経済(生産・物価)にマイナスの影響を与えるものの、その規模は軽微にとどまると推計された。日本経済への影響も軽微にとどまるとみられる。市場予想よりも緩和的な政策が発表された場合には、これらと逆の効果が発生すると見込まれる。

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