サマリー
◆EUにおいても高齢化は確実に進展しており、高齢者が増加する中でどのように社会保障制度を維持するか、また、生産年齢人口の減少局面で労働力をどう確保するかが重要テーマとなっている。高齢労働者の活用促進をねらって、EUでは2000年に年齢による雇用差別を禁止し、各国においても年齢による解雇規定の撤廃等が行われている。また、EUの全体目標である「欧州2020」においては、20-64歳の就業率を75%以上とすることが掲げられている。
◆さらに、EUでは高齢者の社会参加を目的として“Active Ageing”の取り組みが行われている。高齢者の雇用だけでなく、自立した生活や社会参加を通じて、社会への活力となることを目標としており、2020年にEUの健康寿命を2年伸ばすことを目標として、様々な取り組みが実施されている。
◆高齢者の雇用の実態を、スウェーデン、スイス、英国、ドイツ、フランス、イタリアの6カ国で見てみると、年金制度、労働慣行、さらには働くことに対する意識の違いなどにより、それぞれ差がある。ただし、共通点もあり、まず最近15年で55-64歳の中高年層の就業率がそろって上昇傾向にある。特に女性の就業率が上昇し、男性の就業率との差をかなり縮めてきている。背景にあるのは、より高齢まで働くことを奨励するような年金制度の改革、中高年層を対象とする就職斡旋、職業訓練の充実である。これに加えて、高齢になっても健康な人が増えたこと、高学歴者の増加、女性の社会進出が進んだことなどが指摘される。また、企業側でも、少子高齢化が進む中で、高齢者という労働力を活用するべきとの意識が浸透し始めている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
高年齢者雇用レポート⑪台湾:持続不可能な伝統的価値観と中高年就業問題
2015年07月16日
-
高年齢者雇用レポート⑩韓国:高齢者の高い労働参加率と貧困問題
賃金ピーク制が徐々に状況を改善か?
2015年07月16日
-
高年齢者雇用レポート⑨米国:労働市場で存在感を増す高齢者
高齢者労働を促す各種政策も注目
2015年07月16日
-
高年齢者雇用レポート⑧イタリア:消えゆく年金天国
制度改革が国民の就労意識の変化をもたらすか
2015年07月15日
-
高年齢者雇用レポート⑦フランス:根強い早期引退文化
高齢者の就業促進政策へ舵を切るが、道半ば
2015年07月15日
-
高年齢者雇用レポート⑥英国:長期就業文化の定着
就業継続を希望する高齢者とそれを支援する政府の意向が一致
2015年07月15日
-
高年齢者雇用レポート⑤ドイツ:55歳以上の就業率が顕著に上昇
労働力確保が大きな政治課題
2015年07月14日
-
高年齢者雇用レポート④スイス:改めて注目される中高年雇用
2014年2月の国民投票で移民流入数への上限設置を採択
2015年07月14日
-
高年齢者雇用レポート③スウェーデン:「より長い労働人生」の実現へ
高い国民の就労意識と制度が促す高齢者雇用
2015年07月14日
-
高年齢者雇用レポート⑫シンガポール:高齢者の就労ますます重要に
自立を促す政策と問題点
2015年07月16日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日