サマリー
◆フランスにおける高齢者の働き方は、早期引退文化に特徴づけられる。法定年金受給年齢に達する前に引退する人が多く、高齢者の労働力人口比率はOECD加盟国やEU28カ国平均を下回る。これは、いわゆる「世代間ワークシェアリング」と言われる、若年層の雇用機会拡大を優先させる過去の政策に起因する。
◆高齢者の就業インセンティブの低さは、早期引退制度、手厚い失業保険・扶助制度、強固な高齢者保護、充実した年金制度が原因となってきた。労働に対する高齢者の意識も低く、調査では「仕事以外にしたいことがあるから働きたくない」割合が高い。
◆他方で、就業を続ける高齢者は高学歴である傾向がある。また、雇用形態もフルタイムで常用雇用が大半であり、労働形態を嘱託に切り替えるなどして労働時間を制限するなどの「時間のワークシェアリング」は一般的ではないようだ。
◆1993年以降、政府は高齢者の就業促進に重点を置く政策に舵を切った。財政再建を進める上で年金改革の必要性に迫られたほか、EUが高齢者の就業を強く奨励する方針を打ち出したためである。2003、10、13年には大規模な年金改革が実施され、これを機に高齢者の労働力人口も増加するなど一定の効果が見られている。
◆今後は高齢者の就業率を高めるため、雇用と年金受給の併用や、年金を繰り上げ受給しながら段階的に引退する「新しい働き方」について議論が活発化するだろう。しかし、現在のように高齢者に有利な社会保障がある限り、無理をしてまで働き続ける意欲は阻害される。とはいえ、根強い早期引退文化の中、従来の高齢者優遇措置を一気に廃止に持ち込むことは現実的ではないだろう。
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