サマリー
◆イタリアは、日本と並んで高齢化が進んでいる国の一つであるが、かつての手厚い公的年金と早期退職文化により、中高年の就業率は低い。近年では中高年の就業率の上昇も見られるが、一方で若年層の失業問題は深刻であり、現状では中高年と若者の雇用は表面的にはゼロサムとなっている。
◆中高年の就業者の特徴としては、自営業主が多く、有期雇用契約やパートタイム労働者の割合は高くない。また、高学歴の者ほど就業率は高いが、イタリアでは労働者の全体的なスキルの低さが課題の一つとなっている。
◆イタリアでは、財政再建の必要性という側面からまさに年金改革が実行に移されているところであり、中高年の就業率上昇の要因の一つとなっていると考えられる。現状では、早期引退による年金受給者が多いが、「年功年金」の実質的廃止や年金支給開始年齢の引き上げを受けて、今後は中高年が働かざるを得なくなる可能性は高く、早期引退と優雅な年金生活は失われつつあると言えよう。
◆高齢者の就労継続の必要性は認識されているが、雇用対策は主に若年層を中心としたものになっており、高齢者の雇用対策は十分とは言えない。また、企業側、労働者側の双方でいまだに早期退職に対する意識が強いことが就労継続への障壁となっており、今後、国民意識にも変化が起こるかが注目される。
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