2024年05月09日
サマリー
◆2023年10月、東京証券取引所(東証)はカーボン・クレジットの取引価格の透明性向上や取引拡大を目的として、カーボン・クレジット市場を開設した。背景には、日本政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)政策がある。同政策の一環で、2023年度より企業の自主的な排出量取引制度(GX-ETS)が試行的に開始されており、同市場は取引のプラットフォームとしての役割を担う。GX-ETSの本格稼働は、2026年度以降が予定されている。
◆東証カーボン・クレジット市場においては、取引対象はまずは政府が認証するコンプライアンス・クレジットであるJ-クレジットのみである。現状、取引は活況とは言い難く、いかに取引を拡大するかが今後の課題である。東証では、GX-ETSの整備と一体となり、二国間クレジット制度(JCM)に基づき発行されるクレジットやGX-ETSで今後創出される超過削減枠など取引対象の拡大に向けて検討が進められる予定である。
◆市場活性化に向けては、需要面ではGX-ETSにおける市場調達義務化等の制度設計を含む本格稼働やクレジットの制度的な利用の予見可能性の向上、供給面ではクレジット創出の取組み促進、流通面では国内外の民間主導のボランタリー・クレジットを含めた取引対象の拡大などを早急に進めていく必要がある。中長期的には、海外の主要なカーボン・クレジット市場との連携や相互運用を通じ、市場を一層活性化させていくことが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
ISSBがIFRS S2の改正案を公表
温室効果ガス排出量の測定・開示に関する要件を一部緩和
2025年05月16日
-
年金基金のESG投資を実質禁止へ:米労働省
バイデン政権時代に制定されたESG投資促進の規則は廃止へ
2025年05月14日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日